真相求める声やまず=連続爆弾テロ5年、邦人も犠牲―スリランカ 2024年04月21日 18時37分
【ニューデリー時事】スリランカで約270人が死亡した連続爆弾テロから21日で5年がたった。事件の詳しい動機や経緯を巡る謎はいまだ残り、政府の関与説もくすぶる。真相究明を求める声はやまない。
「政府の調査は事件の詳細に踏み込むには程遠かった。透明性のある、独立した公正な調査を求める要求や願いは拒否され続けている」。同国のカトリック教会を束ねるマルコルム・ランジット枢機卿は3月、国連人権理事会に宛てたビデオメッセージでそう述べ、独立した調査の必要性を訴えた。
テロは最大都市コロンボなどで2019年4月21日に発生。キリスト教のイースター(復活祭)を祝う行事の最中だった複数の教会やホテルが爆破され、現地在住の日本人女性も犠牲となった。
実行したのは過激派組織「イスラム国」(IS)の影響を受けた地元組織メンバーとされる。自爆死した9人のうち主犯格の男は数年前からISの思想に傾倒していたと報じられたが、他の実行犯は富裕層も多く、どのような経緯で加わったのか判然としていない。
最高裁は昨年1月、当時のシリセナ政権が事前に隣国インドからテロの危険性について情報提供を受けていたものの内部で共有せず、防げなかったと認定した。政権内部の対立が原因とされている。
一方で英テレビ局は昨年9月、スリランカの現在の情報機関トップが実行犯と通じ、ゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領の権力奪取を助けるためテロを実行したと示唆するドキュメンタリー番組を放送。国防次官を務めた経験のあるラジャパクサ氏はテロ後の19年11月、治安強化を掲げて大統領選に出馬し、勝利した。
同氏や政府は否定しているものの、疑念はくすぶり続けている。ランジット枢機卿はAFP通信に対し、「誰かを罰することに関心はないが、誰がなぜこのようなことをしたのか知りたい」と語った。