トップダウンに潜むわな=ウクライナ交渉、ロシア主導権―トランプ政権100日 2025年04月28日 22時09分

【ワシントン時事】「力による平和」を掲げるトランプ米大統領は、側近を頼りにトップダウンでディール(取引)をまとめるスタイルで外交を進める。だが、就任前から「早期に終結させる」と公言していたウクライナ戦争を巡っては、老練なロシアのプーチン大統領を相手に交渉の主導権を握られている。
「圧倒的多数の住民がロシア統治下に入ることを望むと表明した」。対ロ交渉で中心的役割を担う米国のウィトコフ中東担当特使は3月、ロシア占領下のウクライナ東・南部4州で2022年9月に強行された「住民投票」についてこう述べ、各国に衝撃を与えた。
ロシアは投票結果に基づき、4州の「併合」を決定。先進7カ国(G7)首脳は「偽の投票」「国連憲章違反」と強く非難した。ロシアの暴挙を容認するウィトコフ氏の発言に、停戦交渉の仲介役としての姿勢への不信感が高まった。
40年近くにわたる付き合いから、トランプ氏が絶大な信頼を寄せるウィトコフ氏だが、不動産業界出身で外交経験はない。旧ソ連の情報機関、国家保安委員会(KGB)出身で人心掌握にたけているプーチン氏に取り込まれかねないと、不安視する向きも多かった。
当初はウクライナ情勢に明るい退役陸軍中将のケロッグ米特使が仲介役と目されていたが、プーチン氏が難色を示したとも報じられる。プーチン氏は足元を見透かすかのようにウィトコフ氏を「厚遇」し、既に4回の会談をこなした。
トランプ政権1期目で国家安全保障会議(NSC)の欧州ロシア担当上級部長を務めたフィオナ・ヒル氏は米メディアで、プーチン氏との交渉には「極めて入念な準備が必要だ」と警鐘を鳴らしていた。バイデン前政権が21年11月、ウクライナ侵攻中止をプーチン氏に迫るためモスクワに送り込んだのは、駐ロシア大使の経験を持つバーンズ中央情報局(CIA)長官(当時)だった。
米国は今月17日、英仏独ウクライナとの会合で「和平の枠組み」を提示。この中には、ロシアが14年に一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島を米国がロシア領と認め、ウクライナ東・南部4州の大半をロシアに割譲することが盛り込まれたとされる。
ウクライナに不利な条件をのませるトランプ氏の提案は「侵略者に有利な取引で決着をつけようとしている」(米紙ニューヨーク・タイムズ)と批判されている。「(停戦に)合意してほしい」。トランプ氏が27日にそう訴えるとロシアは呼応するかのように停戦を発表。だが、その期間は5月8~10日の3日間だけだった。