候補者全員に順位付け=多様な意見くむ投票制度―豪総選挙 2025年05月01日 17時44分

【シドニー時事】オーストラリア下院選は、小選挙区の全候補者に順位を付けるという独特の投票方法で行われる。意中の候補が当選しなくても、投票した人の政治的志向がある程度、結果に反映される仕組みだ。開票の手間はかかるが、多様な意見をくみ取ろうとする制度と言える。
候補者が8人いる場合、有権者は最も当選させたい人に「1」を付け、以下、支持の度合いに応じて「2」~「8」の番号を振る。落選させたい候補を下位にできる。一部を空欄にしたり、数字以外の印を記入したりすると無効になる。
まず1次開票で「1」の得票を集計し、過半数を得た候補がいれば即当選となる。誰も過半数に達しない場合は、最下位の候補を脱落させ、その候補への投票で「2」と書かれた人に票を配分。それでも過半数の人がいなければ、下から2番目の候補を外して票を再配分する。こうして過半数を得る候補が現れるまで同じ作業を繰り返す。
2022年の前回下院選のある選挙区では、1次開票でトップの候補が得た「1」が、過半数に満たなかった。下位候補を順に脱落させて票を再配分した結果、1次開票で2位だった候補が最終的に逆転で勝利した。
順位付け投票は、1910年代に国政選挙で採用された。政策的に近い複数の陣営が互いに「2」を付け合えば、無理に候補者を一本化しなくても共闘が可能になる。
また、豪州では投票は義務で、理由なく怠れば20豪ドル(約1850円)以上の罰金が科される。このためほとんどの選挙で投票率は9割を超える。