「敵国」日本兵に慰霊碑=抗日組織関係者、望む遺骨返還―タイ 2025年08月03日 06時13分

タイ北部プレー県ローン郡で、抗日組織との戦闘により死亡した旧日本軍兵士2人の慰霊碑=6月4日
タイ北部プレー県ローン郡で、抗日組織との戦闘により死亡した旧日本軍兵士2人の慰霊碑=6月4日

 【ローン=タイ=時事】タイ北部プレー県ローン郡に、第2次大戦で抗日組織の戦闘員に殺害された旧日本兵2人の慰霊碑がある。父が組織活動家だった地元の男性が建立したもので、男性は異国で命を落とした日本人の若者らを思い、遺骨の返還を望んでいる。
 大戦中に日本はタイと同盟を結び、旧日本軍はインドとビルマ(現ミャンマー)への侵攻拠点としてタイに駐屯した。これに不満を持つ勢力は抗日組織「自由タイ」を結成し、連合軍の協力も得て勢力を拡大させた。
 父が自由タイのプレー県幹部だったプチョンさん(83)によると、旧日本軍の兵士2人が終戦の約2年前、ローン郡ウィアンター地区で自由タイ戦闘員との銃撃戦の末に死亡。遺体はその場に埋葬された。同県には自由タイの訓練キャンプがあり、日本兵2人は駐屯地のあった隣のランパン県から偵察に来たとみられる。
 自由タイの博物館を運営するプチョンさんは2018年、2人のために埋葬地付近に慰霊碑を建てた。「戦時中、日本は自由タイにとって敵だったが、兵士は必要のない戦争の犠牲者。彼らを悼みたかった」と説明する。碑にはタイ語と日本語、英語で「大戦中、祖国のためにタイで職務を全うし亡くなった、勇敢な無名の日本軍人に敬意を表して」と刻まれている。
 「異国の地で亡くなったので、故郷に帰りたいと思っているはず」。プチョンさんは遺骨を掘り起こし、日本に返還することを希望している。海外で死亡した日本兵の遺骨収集に取り組む日本戦没者遺骨収集推進協会は取材に対し、「プレー県に戦没者の遺骨があるという情報は把握している。2025年度の現地調査の派遣に向けて厚生労働省や現地関係機関と調整中だ」と答えた。
 プチョンさんは「大戦終結から80年だが、今も世界各地で戦争が続いている。戦争は誰も得をしないので、起きてほしくない」とつぶやいた。 

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父が抗日組織「自由タイ」のメンバーだったプチョンさん=6月4日、北部プレー県
父が抗日組織「自由タイ」のメンバーだったプチョンさん=6月4日、北部プレー県

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