凶行の瞬間、衝撃の映像=銃犯罪討論中、激化する政治暴力―米 2025年09月11日 21時00分

10日、米西部ユタ州オレムのユタバレー大学で開かれたイベントに参加する保守活動家チャーリー・カーク氏(中央)(エイミー・キング氏提供の動画より)(AFP時事)
10日、米西部ユタ州オレムのユタバレー大学で開かれたイベントに参加する保守活動家チャーリー・カーク氏(中央)(エイミー・キング氏提供の動画より)(AFP時事)

 【シリコンバレー、ワシントン時事】米保守活動家チャーリー・カーク氏(31)は、大学構内で開かれたイベントのステージ上で遠距離から銃撃され、死亡した。多くの聴衆の面前で凶弾が命中した瞬間の映像は、SNSで拡散。トランプ大統領を支持するよう若者に訴え、カリスマ性すら帯びていたカーク氏の死は波紋を広げており、米国の政治・社会的分断が一段と深まるのは必至だ。
 映像などによると、銃声が響いたのは銃犯罪を巡る討論の最中。椅子に座ったカーク氏が「過去10年間で米国に銃の乱射犯は何人いたか」という聴衆の問いに「ギャングの暴力を含めるか、それとも含めないのか」と尋ね返した直後、銃弾を受けたカーク氏の首元から血が流れた。
 カーク氏は18歳で保守系団体「ターニング・ポイントUSA」を設立し、大学などを舞台に活発に活動を続けた。2024年大統領選では、若者票を掘り起こして共和党のトランプ氏の支持基盤を拡大。保守運動の旗手として注目を集める一方、トランプ氏が敗北した20年大統領選に関しては「不正があった」との主張を展開し、党派対立をあおった。
 こうした緊張を背景に、米国では近年、政治家を狙った暴力が相次いでいる。24年7月には、大統領選の選挙集会でトランプ氏が狙撃され、右耳を負傷。今年6月には、民主党のミネソタ州議会議員ら2人が自宅で銃撃を受け死亡した。トランプ氏の2期目就任を経て、対立はさらに先鋭化している。
 トランプ氏は今回の事件後、SNSで公表した演説で「急進左派はチャーリーのような素晴らしい米国民をナチスになぞらえてきた」と述べ、民主党支持者らの敵対姿勢が犯行を招いたと一方的に主張した。保守系シンクタンクのヘリテージ財団は声明で、カーク氏が立ち上げた団体名に触れ「(同氏の死が)わが国のターニング・ポイント(転機)にならねばならない」と訴えた。
 民主党も事件をトランプ氏批判の材料にしている。トランプ氏のSNS演説に先立ち、同党のプリツカー・イリノイ州知事は「大統領の言説がしばしば政治的暴力をあおっている」と強調し、政敵をののしってきたトランプ氏を非難した。 

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