関税収入で米債務圧縮は可能?=トランプ氏「1日3000億円」と主張―景気悪化で税収減の恐れも 2025年04月12日 14時55分

【ワシントン時事】トランプ米大統領は高関税政策を通じ、貿易相手国との「ディール(取引)」だけでなく、関税収入の増加も目指す。膨張する債務の返済や、看板政策である大型減税の財源に充てたい考えだ。しかし、強引な関税引き上げで景気が悪化すれば、かえって税収が減りかねず、思惑通りになるかは微妙な情勢だ。
「関税は1日当たり20億ドル(約3000億円)の収入をもたらす。米国はすぐに再び豊かになる」。トランプ氏は8日、ホワイトハウスでの演説で収入増に期待を寄せた。
実際、収入はじわり増えている。米財務省が10日公表した3月の財政収支では、関税収入は90億ドルと、前年同月の70億ドルから増加。財務省当局者は「関税引き上げの一部が反映されている」と説明した。
3月の収入全体(3680億ドル)から見れば、関税分はわずかだが、今後はさらなる増収が見込まれる。4月に入り、トランプ政権が自動車関税や10%の一律関税、中国に対する145%関税を次々と発動しているためだ。
ただ、ミネアポリス連邦準備銀行のカシュカリ総裁は9日、「関税は短期的には米国の消費者や企業に消費税のように作用する」と指摘。連邦政府は収入増が見込める一方、消費者と企業の購買力は低下、国内総生産(GDP)の伸びは縮小し、失業増に見舞われる可能性があると分析した。米成長率が今年は「1%を幾分下回る」(ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁)水準まで急減速するとの試算もある。
米シンクタンク「サードウェイ」のザック・モラー氏は、トランプ氏の望む「ディール」の結果、関税が引き下げられれば「即座に減収につながる」と指摘。関税の影響で景気後退に陥った場合、「所得税や法人税など他の税収が減り、失業保険給付など社会保障負担が増える」と予測した。
その上で「関税収入で財政状況の是正を試みることによって、トランプ氏は財政をさらに悪化させる可能性がある」と警告した。