医療削減、与党に渦巻く不満=トランプ減税法案、下院も難航必至―米 2025年07月02日 17時00分

【ワシントン時事】トランプ米大統領の看板政策である大型減税を含んだ法案が1日、上院をバンス副大統領(上院議長)の賛成票の上乗せにより、賛成51票、反対50票の僅差で辛うじて通過した。与党共和党内で渦巻く低所得者向け医療制度「メディケイド」削減への不満が「難産」の背景にある。法案審議の舞台は2日、下院に移るが難航は不可避だ。
「メディケイドなどは削減されない。無駄と詐欺、乱用の排除によって強化される」。トランプ氏は上院での法案可決後、SNSでそう強弁した。
だが法案では、減税による収入減を補う支出カットの大部分を「約1兆ドル(約144兆円)」(米紙)に上るメディケイドなど医療費の削減が担う。議会予算局(CBO)によると、メディケイド削減で無保険者が2034年度までに1180万人増える。
富裕層を利する減税を、弱者切り捨てで賄う構図に、野党民主党の下院トップ、ジェフリーズ院内総務は法案可決後の記者会見で「国民が命を失いかねない。米史上最大の公的支援削減だ」と非難した。
トランプ氏は大統領選の選挙運動中から「メディケイドには手を付けない」と繰り返し発言してきた。法案への反対を崩さなかったティリス上院議員(共和党)は6月29日、トランプ氏に次の党予備選で「刺客」を立てると脅され、来年の選挙への出馬を断念。上院本会議で「法案はトランプ氏が大統領執務室などで行ってきた約束を裏切るものだ」と批判した。
CBOの最新の見通しによると、法が成立すればメディケイド削減にもかかわらず、34年度までに財政赤字が3兆4000億ドル増える。共和党下院の財政規律派は「法案を修正し、上院に送り返す」(有力議員)と反発を強めている。