米政治、移民政策で合意「不可能」=経済的影響、右派は無関心―専門家・米大統領選 2024年06月23日 17時35分
【ワシントン時事】米サザンメソジスト大のジェームズ・ホリフィールド教授(国際政治経済学)は23日までに時事通信のインタビューに応じ、移民問題について民主、共和二大政党の主張の隔たりがあまりにも大きく、政策の在り方を巡る合意は「ほぼ不可能だ」との見解を示した。また、共和党右派は、移民制限による経済的な影響に関心が乏しいとの懸念を示した。
同氏によると、冷戦期にはリベラルな民主党が移民を積極的に受け入れる一方、経済界寄りの共和党も外国人労働力の確保を望み、妥協できた。しかし、冷戦終結以降は共和党が右傾化し、分断が進行。移民や貿易政策で「米国の雇用が失われる」といった、すべてを得るか失うかの「ゼロサム思考」がまん延しているという。
ホリフィールド氏は移民政策について、必要な労働力を確保するために、移民に永住権などの長期的な地位を与える「トレードオフ」の前提があり、そこに治安や文化的多様性の要素が加わると説明。トランプ前大統領は有権者の関心を治安に向かわせようとしていると指摘した。
「壁建設」といった国境管理強化については「象徴的な政策だが、根本的な問題に対処しない」と明言。「米国の不法移民の6割以上は当初はビザで(合法的に)入国し、期限後も滞在し続ける形が占める」と話した。
ホリフィールド氏は、アジア系移民を事実上排除した1924年成立の移民法を念頭に置き、11月の大統領選でトランプ氏が勝利すれば「移民システムの完全な閉鎖など、1920年代のような状況になる」と警鐘を鳴らす。その上で「歴史上の重大な局面にある」と強調。移民が制限されれば労働力不足で経済は打撃を受けるのに「経済界が声を上げないことに驚いている」と語った。