トランプ米大統領、イスラエルにいら立ち=訪問見送り、アラブに接近 2025年05月14日 15時45分

トランプ米大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相=4月7日、ワシントン(AFP時事)
トランプ米大統領(左)とイスラエルのネタニヤフ首相=4月7日、ワシントン(AFP時事)

 【リヤド時事】トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の間で溝が深まりつつある。トランプ氏は13日に開始した中東歴訪を通じ、経済・軍事両面でアラブ諸国との関係強化に乗り出した。一方、「後ろ盾」であるイスラエルへの訪問は見送る方針。背景には、パレスチナ自治区ガザへの攻撃の手を緩めないネタニヤフ氏へのいら立ちがある。
 「意見の相違が極めて根深いものであったとしても、過去の紛争を終わらせ、より良い安定した世界に向けて新たなパートナーシップを築く用意がある。永遠の敵などいない」。トランプ氏は13日、サウジアラビアの首都リヤドでこう演説し、イランとの核協議で合意を目指す姿勢を再び強調した。
 トランプ氏は1月の2期目就任後、「核兵器を持たせない」と主張し、イランとの対話に乗り出した。1期目で掲げた「最大限の圧力」政策を再開したものの、最側近のウィトコフ中東担当特使を繰り返し協議に派遣し、イランとの核合意成立を急いでいる。
 こうしたトランプ氏と異なる姿勢を持つのが、長年にわたりイランと対立するネタニヤフ氏だ。イラン核施設空爆計画を提案したものの、紛争拡大を懸念し、対話を優先するトランプ氏が計画を容認しなかったと伝えられている。
 足並みの乱れは対イランだけではない。イスラム組織ハマスがガザで拘束する人質を巡っては、ガザ全域制圧を優先するネタニヤフ氏に業を煮やしたトランプ氏がハマスとの直接対話に踏み切り、米国人1人の解放を実現。イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する米軍の空爆停止も、イスラエルへの事前通告なく発表したと報じられている。
 一方、トランプ氏は巨額の対米投資や米国製武器購入で合意したサウジをはじめ、アラブ諸国への接近を図る。膨大なオイルマネーを抱え、目に見える「ディール(取引)」をまとめやすい相手である上、イランとの関係修復など地域の安定化に前向きな姿勢を示しているためだ。
 トランプ氏は2期目の間にイスラエルとサウジの国交正常化を実現し、自らの「外交レガシー(政治的遺産)」としたい考え。だが、ネタニヤフ氏はサウジが条件とするパレスチナ国家樹立に反対姿勢を崩しておらず、トランプ氏の不満が解消される見通しは立っていない。 

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