パレスチナ・識者談話 2025年07月31日 19時05分

錦田愛子・慶応大教授(本人提供)
錦田愛子・慶応大教授(本人提供)

 ◇日本、米国抜きでの承認は困難か
 錦田愛子・慶応大教授(中東政治)の話 フランス、英国、カナダが相次いでパレスチナの国家承認の方針を示したのは、餓死者が続出するなど自治区ガザの人道状況が看過できないレベルまで悪化したことが背景にある。十分な支援物資を入れるためには、一刻も早く停戦を実現させなければいけない。国家承認という一度しか使えない外交カードをちらつかせて、イスラエルに態度を軟化させるよう政治的圧力をかけている。
 人道主義が根強い英仏では、国内世論の高まりを受けて政府が対応せざるを得なくなった側面もある。ただ、この流れがイタリアやドイツなど先進7カ国(G7)の別の国に波及するとは考えづらい。米国との同盟関係を外交の基盤としている日本は、米国が前向きな姿勢を示さない限り、国家承認にかじを切るのは難しいだろう。
 既に世界の大半の国がパレスチナを国家承認しており、昨年5月には国連総会でもパレスチナの国連加盟を支持する決議案が採択された。ただ、国家樹立の最後の関門は国連安保理で合意を得ることで、承認する国が増えても実質的な意味はほとんどない。パレスチナは国家の成立要件である主権や領土が曖昧な状態にあり、国際社会で国家承認が進んだとしても、実体としての国家が成立するわけではないことに注意が必要だ。 

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