米への移民希望者、大量流入=大統領選で議論低調―メキシコ 2024年06月02日 14時57分
【メキシコ市時事】中南米から米国への移民希望者が近年急増し、通り道となるメキシコに大量流入している。犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たないが、政府側の対応はずさんで、2日の大統領選でも議論は低調だ。11月の米大統領選の結果次第で事態が混迷を深める可能性もあり、最前線で対応する民間施設は身構えている。
メキシコ市内でカトリック系団体が運営する保護施設「アルカンヘル・ラファエル」は定員が200人だが、入り切らない人々が敷地の外にあふれている。いとこが住む米アトランタを目指すベネズエラ人エドゥアルド・フェルナンデスさん(37)は、母国から徒歩で1カ月半をかけて北上した。「仕事がなく、(治安面も)100%危ない」と出国理由を明かした。
食事や宿泊が無料で提供される施設は約2年前に開設。SNSなどで知った人々が訪れ、ほぼ全員がアプリを通じた米国への難民申請の予約が取れるまで過ごす。施設責任者のフアンルイス・カルバハルさん(49)は「多くの人が道端で野宿し、人権侵害も多い」と危機感を口にした。
移民希望者らを支援するメキシコの政府機関が最近、閉鎖。メキシコに入国した人々は、道中で物を奪われたり、金銭を要求されたりする事態に直面している。さらに米国との国境付近では、犯罪組織が誘拐や組織への勧誘などを目当てに待ち受けている。
メキシコに不法入国して米国を目指した移民希望者は昨年、250万人と過去最多を更新した。カルバハルさんは大統領選で「具体的な移民政策を掲げている候補者はいない」と不満を表明。米国では反移民を唱えるトランプ前大統領が返り咲く可能性があり、「国境を閉鎖したり、追放したり、厳しくなるのでは」とため息をついた。