不公平への怒り、政権崩壊導く=ネパール、雇用不足に苦しむZ世代―南アジアで「革命」連鎖 2025年09月14日 16時44分

【ニューデリー時事】ネパールの大規模デモでオリ政権が倒れ、カルキ元最高裁長官が暫定政権の首相に就いた。政変をもたらしたデモの背景には、政府によるSNS規制だけでなく、政治家の腐敗に加え、富や就労機会がエリート層に偏っていることへの若者の怒りがあった。
◇「ネポキッズ」拡散
破壊されたまま放置された車や、壁が黒くすすけた建物。首都カトマンズの街中には激しいデモの爪痕が残る。8日以降、10~20代の「Z世代」を中核としたデモ隊の一部が暴徒化。デモ参加者ら70人超が死亡した。「K.P(オリ氏)は殺人者」。辞任した首相が率いた政党本部にはそう落書きされていた。
デモに参加した大学生プラシャンサ・シャルマさん(23)は「オリ政権は若者を代表していない。自らの権力や家族を守るためだけに忙しくしていた」と憤る。ネパールでは近年、同じ顔ぶれが交代で政権を握る時期が続いた。オリ氏の首相登板は3度目だった。
デモの前には、政治指導者の子供が海外で派手な生活を送る様子を取り上げた動画がSNSで拡散。ネット上で「ネポティズム(縁故主義)」をもじって「ネポキッズ」と呼ばれ、デモが激化する要因になったようだ。
「彼らは壊れた体制や不平等の象徴。普通の若者はどんなに一生懸命勉強しても、政治家のコネがなければ良い仕事を見つけるのは難しい」とシャルマさんは語る。
人口約3000万人のネパールはアジア最貧国の一つ。多くの若者は仕事を求め、国外に流出している。世界銀行によれば、昨年の同国における15~24歳の失業率は20.8%に上った。
◇相次ぐ「革命」
2022年のスリランカ、昨年のバングラデシュ。南アジアでは、若者を中心としたデモで高齢の指導者が追放される「革命」が相次いでいる。スリランカは外貨枯渇に伴う経済危機、バングラデシュは公務員採用の優遇問題がきっかけだった。事情はそれぞれ異なるが、働きたくても就労先がない若年層の不満の高まりが根底にあると指摘されている。
南アジア地域研究を専門とするインド・ネール大のガデ・オムプラサド准教授は、これらの国々では人口ピラミッドで若年層が膨らんだ形になる「ユース・バルジ(若年層の膨張)」が見られると指摘。「失業が非常に深刻な問題になる共通の課題を抱えている」と分析した。