オーストラリアで排外主義が顕在化=「反移民」あおる議員も 2025年09月14日 14時58分

オーストラリア東部ブリスベンで行われた反移民デモ=8月31日(EPA時事)
オーストラリア東部ブリスベンで行われた反移民デモ=8月31日(EPA時事)

 【シドニー時事】オーストラリアで移民の受け入れ反対を訴えるデモが各地で行われるなど、排外主義が顕在化してきた。過激な言動で反移民の風潮をあおる国会議員もいる。豪州は1970年代に「白豪主義」と呼ばれた移民の制限を撤廃。アジアや中東などから広く人を受け入れて多文化社会を築いてきたが、その流れは最近の住宅不足や物価高を背景に揺らいでいる。
 「豪州のための行進」と銘打った反移民デモが8月31日、国内10都市以上で一斉に行われ、警察推計で約5万人が参加した。一部の参加者は、デモに抗議する人々や警察官と衝突し、複数が逮捕された。その後も反移民デモは続いており、与党・労働党は「極右勢力が後押ししている」とみて警戒を強めている。
 保守系小党のボブ・カッター下院議員(80)は、祖父がレバノン出身でありながら反移民デモに参加した。デモに先立つ記者会見で家系との整合性を問われると、「黙れ。お前は人種差別主義者だ」と質問者を罵倒。拳を突き付けて殴りかかる構えを見せ、物議を醸した。
 最大野党・自由党のジャシンタ・プライス上院議員(44)は9月初旬、急速に増えているインド系移民について「多過ぎる。労働党が自分たちに投票させるために受け入れている」と主張した。インド系移民や労働党から「全く根拠のない話だ」と猛批判を浴びて撤回したものの、謝罪を拒んだため党の役職を更迭された。
 インド出身で在豪30年のジャーナリスト、ラジ・スリさんは「デモもプライス氏の発言も、分断を招く政治的動きだ。住宅不足といった国民全体の課題の責任を不当に移民になすりつけようとしている」と指摘している。 

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