保守党、公約発表も支持回復せず=労働党は路線問題が影―英総選挙まで1カ月 2024年06月03日 17時21分
【ロンドン時事】英総選挙は7月4日の投票まで1カ月となった。世論調査で劣勢の与党・保守党を率いるスナク首相は、矢継ぎ早に公約を発表したものの支持率回復につながっていない。一方、最大野党・労働党のスターマー党首は、政権奪還を目指し中道路線を鮮明にしているが、党内から「左派切り捨てだ」と批判の声が上がっている。
党勢回復に向けて全国を駆け回るスナク氏が、選挙戦スタート直後に打ち出したのが「兵役復活」だ。総選挙に勝利すれば、18歳の国民を対象に、1年間の兵役もしくは警察や医療機関などでの社会奉仕活動を義務付けるというものだ。
公約として兵役を唐突に発表したのは、保守票をつなぎ留めるとともに、労働党との違いを際立たせることが狙いとみられる。だが、調査会社ユーガブが5月29~30日に行った世論調査によると、支持率は労働党の46%に対し保守党は21%。スナク氏の思惑とは裏腹に、差が縮まる気配は見られない。
一方、労働党は「チェンジ」をスローガンに選挙戦を優位に進めるが、党内の団結に苦慮している。スターマー氏が政権だけでなく、党の軸足の変化もアピールしているためだ。
2019年の前回総選挙で、労働党が左派のコービン党首の下で惨敗したことを教訓に、後を継いだスターマー氏は中道路線へと大きくかじを切った。今回の総選挙でコービン氏は党公認を外され、無所属で出馬することになった。
1987年に黒人女性として初めて当選した同党のアボット議員は、あからさまな路線転換を「党は左派を淘汰(とうた)している」と非難。週内の候補者決定を前に、路線問題が選挙運動にも影を落としかねない状況で、スターマー氏は火消しに追われている。