「米国の世紀」トランプ氏が終止符も=知日派ジョセフ・ナイ氏遺稿―米外交誌 2025年06月04日 14時13分

米国の国際政治学者ジョセフ・ナイ氏=2019年12月、ワシントン
米国の国際政治学者ジョセフ・ナイ氏=2019年12月、ワシントン

 【ワシントン時事】米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」(電子版)最新号は、知日派の国際政治学者で5月に88歳で死去したジョセフ・ナイ氏の遺稿を掲載した。ナイ氏は、トランプ大統領が経済・軍事的圧力を外交に利用する一方、価値観や文化の魅力を源泉とする「ソフトパワー」を軽視しているとし、「『米国の世紀』と呼ばれた時代を終わらせかねない」と警鐘を鳴らした。
 ナイ氏は、国家の力には「強制・報酬・魅力」という三つの側面があり、米国が冷戦に勝利したのは、旧ソ連が武力による「強制」ばかりに頼り、価値観がもたらす「魅力」を欠いたためだと指摘。トランプ氏の高関税政策や、帝国主義的野心に基づくカナダやデンマーク領グリーンランドへの威圧、国際開発局(USAID)解体による対外支援縮小は、同盟国を失望させると警告した。
 また、人権を弾圧し自由な言論を抑え込む中国との比較では、まだ米国が「魅力」で勝るものの、トランプ政権が今の外交手法を続ければ衰退は不可避だと言及。「第2次大戦以降、米国に恩恵をもたらした国際秩序の崩壊を加速させる」と喝破した。
 クリントン政権時代に国防次官補を務めたナイ氏は、故アーミテージ元国務副長官らと対日政策提言を重ねるなど、日米同盟の深化に尽力した。原稿はプリンストン大のロバート・コヘイン名誉教授との連名で、遺族が掲載に同意した。 

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