奪われた日常、タイの遺族涙=駐カンボジア大使「心痛む」―双方が被害地域公開 2025年08月02日 14時21分

タイ・カンボジア国境紛争で両国政府は1日、それぞれ国内の被害地域を各国外交官らに公開した。タイ側では焼け焦げたコンビニの前で家族を失った遺族らが涙を流し、カンボジア側では日本大使が現場の惨状について「心が痛む」とSNSにつづった。
◇妻子3人亡くす
時事通信記者は、タイ側で行われた被害地域の視察に参加した。
東北部シーサケート県のコンビニは、戦闘が始まった7月24日に撃ち込まれた砲弾で炎上し、店内などにいた8人が死亡。焦げた商品棚はそのままで、周囲にはガラスが散乱していた。
「ここでは兵士の衝突はなく、市民の日常があっただけだ」。妻と子供2人を亡くしたコムサンさん(40)は同24日、避難命令を受けて車で避難所に向かう途中、危険区域から外れて給油のためガソリンスタンドに寄った。妻らは菓子を買いにコンビニに入り、コムサンさんは外で待っていたところ爆発が起きた。「3人はもう戻ってこない」と疲れ切った表情で語った。母親の遺影を持った女性は「母には何も責任がない」と訴え涙を流した。
店は国境係争地から約30キロ離れた市街地にある。視察に参加したある国の駐在武官は「カンボジア軍が攻撃目標との距離などを誤ったのではないか」と分析した。
衝突の発端を巡っては両国の説明が対立している。カンボジア政府はタイへの攻撃について「侵略に対して自衛権を行使した」と主張している。
◇「一刻も早く平和を」
係争地から約10キロにあるシーサケート県内の小規模な病院は、7月26日に直撃した砲弾で窓と内部が破壊された。衝突発生直後に患者らは避難してけが人はいなかったが、地元自治体幹部は「ここが攻撃を受けるとは誰も思っていなかった」と語った。
約5000人が避難生活を送る同県の施設では、係争地近くに住む女性タニャラックさん(53)が取材に応じた。避難数日後に一度帰宅したが銃声が聞こえ再び施設に戻ったといい、「早く家に帰りたい」と訴えた。
タイ側の視察に参加した大鷹正人駐タイ大使は取材に対し、7月28日にタイとカンボジアが合意した停戦について「定着のために日本を含めて国際社会が支援する必要がある」と強調した。
一方、カンボジアでも北部ウッドーミアンチェイ州で空爆を受けるなどした被害地域と、数千人が滞在する避難所が公開された。参加した植野篤志駐カンボジア大使はフェイスブックへの投稿で「一刻も早く完全な平和が戻るため、日本政府として最大限尽力する」とコメントした。(シーサケート=タイ=時事)。
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