デモ暴徒化、政権に試練=大統領、議員手当見直し表明―インドネシア 2025年08月31日 19時40分

30日、インドネシア・バリ島デンパサールで警察と衝突するデモ参加者(EPA時事)
30日、インドネシア・バリ島デンパサールで警察と衝突するデモ参加者(EPA時事)

 【ジャカルタ時事】インドネシアで反政府デモが拡大している。一部は暴徒化し、放火や国会議員宅の襲撃・略奪といった暴力行為が相次ぐ。事態収拾に向け、プラボウォ大統領は31日、国民の批判を招いている国会議員手当の見直しを表明。昨年10月に発足した政権は大きな試練を迎えている。
 デモのきっかけは、国会議員がジャカルタ首都圏の月額最低賃金の10倍近い住宅手当を受け取っていることへの反発だった。プラボウォ政権が学校無料給食など大統領の肝煎り政策に予算をつぎ込み、他の事業費を削減する中、国会議員の特権的な待遇への批判が噴出した。
 これを受け、学生らは25日にジャカルタの国会付近で大規模なデモを実施。続く28日のデモの際、バイクタクシー運転手の男性が警察車両にひかれて死亡したことで、抗議運動は激化した。
 デモは国内各地に波及。複数の都市で地方議会庁舎が放火され、29日にはスラウェシ島マカッサルで議会職員ら4人が死亡した。30、31両日には、ジャカルタなどで暴徒化した市民がムルヤニ財務相や国会議員の家に押し入り、家財を略奪・破壊した。
 政権は危機感を募らせている。大統領府は30日、北京で9月3日に行われる戦勝記念行事に出席するため予定していたプラボウォ氏の中国訪問を取りやめると明らかにした。直後に調整していた訪日にも影響しそうだ。
 プラボウォ氏は31日、大統領宮殿で各党代表と協議した後に記者会見し、国会議員手当の一部見直しに議会が同意したと発表。その上で、暴力的な抗議活動について、「法律違反であり、国家は国民を保護する義務がある」と強調した。
 ただ、議員手当の見直しで国民の怒りが収まるかは見通せない。立命館大の本名純教授(インドネシア政治)は、怒りの源泉となっている政策を政権が転換しない場合、「不満は拡大し、それを抑え込む強権的な手段も常態化し、民主政治が危機にさらされることになるだろう」と語った。 

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