北朝鮮関係・識者談話 2025年09月02日 17時33分

礒崎敦仁 慶応大教授
礒崎敦仁 慶応大教授

 ◇自主路線への回帰が狙い
 礒崎敦仁・慶応大教授(北朝鮮政治外交)の話 北朝鮮は一国に依拠する外交を好まず、自主路線を基本としている。中国ともロシアとも一定の距離を取りながら友好関係を保ちつつ、自分のやりたいことをするのが北朝鮮の外交だ。金正恩朝鮮労働党総書記は、今回の訪中が中朝関係を修復し、ロシア一辺倒の最近の外交を本来あるべき形に戻す良いきっかけになると考えたのだろう。
 ロシアによるウクライナ侵攻でロシアに武器を輸出し、派兵した北朝鮮では、「戦争特需」が生まれている。しかし、侵攻が収束するにつれ特需も減らざるを得ず、長期的に見ると、中朝関係を修復しておきたいと考えるのは当然だ。
 また、トランプ米大統領が北朝鮮への不規則発言を続ける中、米朝交渉実現の可能性も踏まえ、中国と関係を築き米国の出方に備えておく必要がある。北朝鮮としては米国との交渉で、核保有したまま主権国家として認めてもらいたいとの思惑もある。
 正恩氏が多国間外交の場に出るのは一国の最高指導者としての自信の表れだ。大国の首脳と対等に肩を並べられるということを内外に示すことができる。
 中国は北朝鮮の同盟国でありながら、北朝鮮の核実験に反対してきた。どんなに協力関係を誇示しても、中朝間のわだかまりは根本的に消えるものではない。 

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