中朝、打算の再結束=対米関係にらむ―習氏、正恩氏を厚遇 2025年09月03日 19時12分

【北京、ソウル時事】中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は3日、北京で約6年ぶりに対面し、「再結束」をアピールした。対米関係の改善を目指す習、正恩両氏が打算の末、思惑が一致したことが背景にある。ただ、打つ手が限られていた習氏に対し、正恩氏が歩み寄った色彩が濃く、両氏の駆け引きは正恩氏が事実上「勝利した」との見方が出ている。
「(正恩氏に)年内に会いたい」。天安門楼上に並んだ中朝両首脳の念頭にあったのは、トランプ米大統領が8月に発したこの一言だろう。
米国との対話再開に備える正恩氏にとって、中国の後ろ盾は重要な意味を持つ。多国間外交の舞台に立ったことのなかった正恩氏が、20カ国以上の首脳が集まる軍事パレードに姿を現したのは、疎遠になっていた習氏を引き寄せることが狙いだ。
ここ数年、中朝関係が停滞する中、正恩氏はウクライナに侵攻するロシアとの軍事協力を拡大した。ロシアから経済的な見返りも得ていたが、プーチン氏を信頼しているわけではない。トランプ氏がウクライナ和平の仲介に意欲を見せる中、プーチン氏が停戦に応じれば「北朝鮮の価値」の低下は避けられない。正恩氏は習氏との「和解」が必要となっていた。
一方の習氏は、ロ朝の接近に不快感を抱いていたとされる。中国は北朝鮮の派兵を事前に知らされていなかったもようだ。北朝鮮を長年支えてきた中国はメンツをつぶされた形になっていた。
それにもかかわらず、習氏は正恩氏を軍事パレードの「主賓」として厚遇した。北朝鮮への影響力を誇示することで、正恩氏との再会に前向きなトランプ氏との交渉で「優位に立てる」との思惑がうかがえる。
北京の知識人は、核・ミサイル開発にまい進する北朝鮮の「冒険的行動」を内心苦々しく思いつつも、習氏は受け入れざるを得ないと指摘する。米国との関係悪化で中国経済の苦境が続く中、習氏にとって、トランプ氏が関心を示す正恩氏と連携するメリットは大きい。
ただ、習、正恩両氏が互いを必要としているのは、あくまでトランプ氏との「ディール(取引)」が目的だ。軍事パレードを通じて演出した「蜜月」は、米国との関係次第で変化する可能性をはらんでいる。