北方領土、元島民100人の写真展=取材6年「記憶を記録に」―東京 2025年09月14日 05時44分
北方領土の元島民100人の肖像写真展「わたしの百人の祖父母たち―北方領土・元島民の肖像―」が、東京都新宿区の「OM SYSTEM GALLERY」で開催されている。ソ連(現ロシア)による占領から今年で80年。いまだ帰れない故郷にはせる思いをモノクロで切り取った。
写真展は、歯舞群島出身の祖父を持つ写真家の山田淳子さん(43)=新宿区=が写真集出版に合わせて企画した。祖父は「島のことを何も話さず亡くなった」といい、足跡をたどろうと取材を始めた。全国に散った元島民を訪ね歩き、積み重ねた取材は約6年に及んだという。
終戦時に約1万7000人いた元島民のうち、健在なのは5000人足らず。撮影した10人が他界し、「元島民の記憶を記録しないと失われてしまうと思った」と山田さん。作品が「今も故郷に帰れない人がいることを知るきっかけになれば」と願う。
会場に足を運んだ自営業の高世仁さん(72)=国分寺市=は、ロシア人との島の共同開発を望む元島民の言葉を記したパネルを目にし、「ソ連に対する元島民の愛憎入り交じる気持ちが表れていた」。検査技師の風間玲子さん(71)=東京都=は「これは自分たちの時代のこと。今も戦争の爪痕が残っていると感じた」と話した。
13日にはトークイベントも開かれ、ロシアの安全保障政策が専門の東京大先端科学技術研究センターの小泉悠准教授が講演。「島にいた人々が戦後どうなったかは、歴史の教科書に出てこない。一人ひとりの写真からいろいろな人生があったことが豊かに感じられた」と語った。写真展は15日まで。