パキスタン、外交多角化で攻勢=米・サウジに接近、印は戦略見直しか 2025年10月07日 16時55分

パキスタンのシャリフ首相=9月25日、ホワイトハウス(AFP時事)
パキスタンのシャリフ首相=9月25日、ホワイトハウス(AFP時事)

 【ニューデリー時事】パキスタンが外交多角化で攻勢を仕掛けている。宿敵である隣国インドと関係が深い米国やサウジアラビアに接近。インドには少なからぬ動揺が走っており、外交戦略の見直しを強いられる可能性もある。
 「世界中の紛争終結に向け誠実に努力した『平和の人』」。9月下旬、米ホワイトハウスを訪れたパキスタンのシャリフ首相は、会談したトランプ大統領をそう評した。
 シャリフ氏は軍トップのムニール陸軍元帥兼参謀長と共に訪問。ムニール氏は6月もホワイトハウスに招かれており、異例の厚遇だ。
 パキスタンは5月に起きたインドとの武力衝突の停戦を仲介したとして、トランプ氏をノーベル平和賞候補に推薦している。同氏は受賞を熱望しているとされ、露骨な持ち上げに気を良くしているようだ。
 トランプ政権のパキスタンに対する相互関税は19%。対してインドにはロシアからの原油大量購入を理由とした追加関税を合わせ、計50%の関税を課している。インドのモディ首相は印パ衝突におけるトランプ氏の仲介を否定しており、関係に隙間風が吹く。
 外交スタンスの変化はトランプ氏の好き嫌いだけによらないとの分析がある。パキスタンの元外交官マスード・ハリド氏は、バイデン前米政権は南アジアやインド洋における「安全保障提供者」としてインドに傾斜していたとの見方を示した。その上で「トランプ政権はインド太平洋戦略を再考しているようだ。それが印パの対米関係にある程度の公平性をもたらした」と語る。
 また、パキスタンは9月中旬、中東のサウジと「戦略的相互防衛協定」を結んだ。サウジにとってイスラエルやイランの脅威が高まる中、米国以外に自国の安全保障を頼れる先が同じイスラム教スンニ派で事実上の核兵器保有国パキスタンだったようだ。有事の際には同国が「核の傘」を提供する可能性が取り沙汰されている。
 サウジとの関係強化について、対米接近の観点で捉える向きもある。インドのカンワル・シバル元外務次官は地元メディアへの寄稿で、「サウジに隣接するバーレーンとカタールに巨大な米軍基地があり、兵器供給などでサウジの安全保障を長年支えてきたことを考えると、協定の交渉が米国の承認なしになされたとは考えにくい」と指摘。ただ、その意味合いについてはさらなる分析を要するとした。 

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