イスラエル、パレスチナ・識者談話 2025年10月09日 15時56分

◇完全には戦闘止まらず
錦田愛子・慶応大教授(中東政治)の話 イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスが自治区ガザでの和平案第1段階で合意したことで、イスラエル軍の攻撃は減る見通しだが、ハマスの武装解除まで完全には止まらない。治安維持名目のガザ駐留も続く。ハマスは人質のうち生存者は解放しても、遺体は交渉カードとして手元に残す可能性が高い。次の段階の協議妥結には時間を要しそうだ。
イスラエル側は生きている人質が戻れば半分は満足する。ネタニヤフ政権はハマス壊滅まで戦闘を続けると強調してきたが、人質家族らの団体の圧力や、解放に向けた国内世論の高まりが合意を後押しした。
米国が和平に向け提示した20項目には、ガザ退去を条件にハマス戦闘員に恩赦を与える内容が盛り込まれた。ハマスにとって組織壊滅を免れ、他国で活動する道を残す「好条件」だ。
仲介に当たったトランプ米大統領がノーベル平和賞受賞に意欲を示してきたことも合意の背景にある。一方、人質解放後はトランプ氏がガザ情勢への関心を失うことも考えられる。合意履行を担保するため、米国の関与継続が重要だ。