中東安定へ、試される指導力=和平実現に険しい道のり―米 2025年10月09日 16時31分

8日、ホワイトハウスで発言するトランプ米大統領(EPA時事)
8日、ホワイトハウスで発言するトランプ米大統領(EPA時事)

 【ワシントン時事】イスラエルとイスラム組織ハマスが和平案への第1段階で合意したことで、トランプ米大統領が目指すパレスチナ自治区ガザでの戦闘終結が近づいた。だが、合意には不透明な部分も多く、和平実現への道のりは険しい。緊張が続く中東情勢の安定に向け、「ピースメーカー(平和の構築者)」を自任するトランプ氏の指導力が試される。
 「アラブ(諸国)やイスラム世界、イスラエルとその全ての周辺国、そして米国にとって偉大な日だ」。トランプ氏は8日、SNSの投稿でこう強調し、合意への喜びをあらわにした。
 トランプ氏がガザ停戦とハマスの人質解放の合意にこぎ着けたのは今回が2度目。1月の2期目就任直前にもバイデン前政権との協力で停戦を成し遂げたが、イスラエルのネタニヤフ首相がガザ攻撃を再開し、和平の機運は遠のいた。
 停戦交渉が難航する一方、イスラエルは6月にイランを先制攻撃し、9月にハマス幹部を狙って米国と関係の深いカタールを空爆した。紛争解決を自身の「政治的遺産(レガシー)」とする目標を持つトランプ氏は、中東の不安定化を助長する動きに不満を募らせた。
 ガザ攻撃が続く中、米国内ではイスラエルへの支持が低下。米紙ニューヨーク・タイムズなどが9月に実施した世論調査では、イスラエル支持が34%に対し、パレスチナ支持は35%となり、1998年の調査開始後、パレスチナ支持が初めて上回った。トランプ氏は9月下旬、こうした世論も背景に直接会談でネタニヤフ氏に圧力をかけ、和平案への支持を取り付けた。
 ただ、第1段階の合意からは、今後の焦点になる恒久停戦に向けたハマスの武装解除や戦後のガザ統治の具体像は見えてこない。合意の着実な履行や協議進展に向け、トランプ氏がイスラエルとハマス双方に影響力を発揮し続けることができるかどうかが、和平のカギを握る。 

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