AI依存で欠陥報告書=引用は捏造、請負側が2割返金―豪政府委託 2025年10月11日 06時10分

AIと人(イメージ)
AIと人(イメージ)

 【シドニー時事】オーストラリア政府が外部に作成を委託した調査報告書で、架空の学術論文を捏造(ねつぞう)するなどの欠陥が多数見つかった。作成過程で人工知能(AI)に頼り、事実確認がずさんだったことが原因。請け負った企業は政府の求めに応じ代金の約2割を返還した。だが、議会からは全額返金を求める声が出ている。
 問題の報告書は、雇用省がコンサルタント大手デロイトに委託して7月に公表した社会保障制度見直しに関するもの。実在しない論文や訴訟の判決文が複数箇所で「引用」された。参考文献リストの1割に当たる14件は虚偽だった。これらの誤りは専門家やメディアの指摘で判明した。
 デロイトは当初、雇用省に「転記ミス」と説明したが、騒ぎが大きくなると、生成AIを使用していたことを認め、欠陥部分を修正した。雇用省は委託料約44万豪ドル(約4400万円)のうち、約9万8000豪ドル(約980万円)の返還を請求し、デロイトが同意した。
 専門家らは、AIが実在しない情報をあたかも事実のように生成する「ハルシネーション(幻覚)」が起き、それを担当者が見抜けなかったことを問題視している。10月9日の上院委員会では、雇用省とデロイトに対する批判が与野党から噴出し、「これだけ仕事の質が低ければ全額返金が当然だ」との意見も出た。 

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