揺らぐAUKUS原潜計画=米政権、豪国防費増へ圧力か 2025年06月12日 17時02分

入港する米バージニア級原子力潜水艦=2月26日、豪西部ロッキングハム(AFP時事)
入港する米バージニア級原子力潜水艦=2月26日、豪西部ロッキングハム(AFP時事)

 【シドニー時事】米英オーストラリアの安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に基づく豪軍への原子力潜水艦配備計画が揺らいでいる。トランプ米政権が「米国第一」の立場から見直しに着手したことが12日、表面化したためだ。米側としては、米軍自身の潜水艦増強を急ぐとともに、豪政府に国防費を大幅増額するよう圧力をかける狙いもあるとみられる。
 AUKUSはバイデン前米政権時代の2021年に創設され、23年に原潜計画が合意された。豪州は30年代に米バージニア級原潜を3~5隻購入し、その後、米英豪で次世代型原潜を共同開発するという流れだ。インド太平洋で軍事的動きを活発化させる中国に対する抑止力強化を主眼としている。
 だが、トランプ政権は台湾有事を念頭に米海軍の潜水艦調達を確実に進めることを重視。米国防総省当局者は原潜計画見直しについて「米軍の即応態勢を構築できるか、防衛産業が需要を満たせるかを確認する」と豪メディアに説明した。結果次第では、豪軍への原潜配備は後回しとなる可能性がある。
 一方、トランプ政権は豪政府に対し、国防費を国内総生産(GDP)比3.5%に増やすよう求めている。34年6月までに同2.3%に引き上げることを計画する豪政府は、さらなる上積みに慎重姿勢を崩していない。このため、米側は原潜計画見直しをカードにして増額回答を迫ることが予想される。
 アルバニージー豪首相は、15~17日の先進7カ国(G7)首脳会議に合わせ、カナダでトランプ大統領と初の対面会談を行う方向で調整中。関税問題に加え、原潜計画と国防費が重荷となった。 

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