折り鶴でつなぐ平和への思い=名刺や灯籠などに再利用―障害者雇用にも貢献・広島 2025年08月05日 14時49分

「原爆の子の像」(中央)とその周りに展示される折り鶴=7月24日、広島市中区
「原爆の子の像」(中央)とその周りに展示される折り鶴=7月24日、広島市中区

 広島市中区の平和記念公園にある「原爆の子の像」にささげられる折り鶴は、毎年国内外から約1000万羽、重さにして約10トンに上る。市は10年以上前から、この折り鶴を企業や市民などに配って再利用する取り組みを行っている。担当者は「折り鶴に込められた平和への思いが、世界の多くの人に伝わり、次世代に継承され、核兵器廃絶と世界恒久平和を願う輪が広がる」と話す。
 「原爆の子の像」は、2歳で被爆し、白血病により12歳で亡くなった佐々木禎子さんがモデルとなって造られた。病床で自ら回復を願い鶴を折り続けた佐々木さんが絵本や教材の題材になったことで、折り鶴が届くようになった。
 届いた折り鶴は、像の周りのブースで一定期間展示後、保管されていたが、市は2012年から希望する企業などでの再利用を開始。これまでに延べ600以上の企業や団体などが、折り鶴からできた再生紙を使って名刺やメモ帳などを作製しているほか、毎年8月6日の夜に原爆ドーム前を流れる元安川で行われる「灯籠流し」にも使われている。
 一般社団法人「千羽鶴未来プロジェクト」では、市から受け取った折り鶴を市内外の障害者福祉事業所53施設と共同で再利用。事業所の利用者ら計670人で折り鶴を解体、分別して工場に出荷し、工場から戻ってきた再生紙を使って缶バッジやメモ帳、付箋などの製品を作製、販売している。
 53施設の一つ「すまいるスタジオ」管理者の河東侑香里さん(34)は「障害のある人の手で(折り鶴が)商品に生まれ変わって、平和の思いがつながっている。とても意義深い」と話した。
 メモ帳などの作製に携わる女性は「ただ働くだけでなく、平和のための折り鶴を再生することで、社会に貢献し役立てている。とてもありがたい」と喜びを語った。 

その他の写真

障害者福祉事業所「すまいるスタジオ」で作られた、折り鶴の再生紙を使った製品=7月15日、広島市中区
障害者福祉事業所「すまいるスタジオ」で作られた、折り鶴の再生紙を使った製品=7月15日、広島市中区

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