来年初にかけ利上げ検討へ=米関税、政局を見極め―日銀 2025年09月10日 17時22分

日銀本店=東京・日本橋本石町
日銀本店=東京・日本橋本石町

 日銀は、今秋から来年初めにかけて0.75%への追加利上げを本格検討する。今年1月に0.5%への利上げを決めたが、その後はトランプ米政権による高関税政策の発動を受け、据え置きを続けてきた。食料品を中心に物価が上振れて推移する中、米関税の内外経済への影響や国内政局の動向を見極め、利上げ時期を探る意向だ。
 トランプ米大統領は今月4日、日本から輸入する自動車への関税率を27.5%から15%にすることなどを盛り込んだ大統領令に署名した。日銀内では「関税を巡る不透明感が一定程度低下した」(幹部)との見方が広がっている。
 日銀は18、19両日に開く次回の金融政策決定会合では、政策金利を現状維持とする公算が大きい。今後は10月公表の全国企業短期経済観測調査(短観)や、同月開く支店長会議などで得られたデータや情報を分析。同月以降の会合で利上げの是非を議論する。
 日銀の一部には早期利上げを支持する声がある一方、米関税の影響がこれから本格化するとして、世界経済の下振れリスクを慎重に見極めるべきだとの意見も根強い。日銀はコメの価格高騰など一時的な変動要因を除いた「基調的な物価」が今後、いったん伸び悩むと想定しており、「利上げ判断はそれほど急ぐ必要はない」(別の幹部)との指摘もある。
 石破茂首相の退陣表明も今後の日銀の判断に影響を及ぼしそうだ。当面、政治が不安定化するのは確実で、次期政権との間で利上げを巡る意思疎通に時間がかかる可能性もある。
 日銀は1995年に当時の政策金利の公定歩合を1%から0.5%に引き下げて以降、約30年にわたり同水準を超える利上げをできずにいる。立ちはだかる「0.5%の壁」の突破に向け、日銀は正念場を迎える。 

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