日中韓接近をけん制か=会談直前に衛星予告―北朝鮮 2024年05月27日 19時13分
【ソウル時事】北朝鮮がソウルで開かれた日中韓首脳会談(サミット)直前に軍事偵察衛星の打ち上げを予告したのには、日中韓3カ国の接近をけん制し、伝統的に関係の深い中国の反応を見極める狙いがあったもようだ。北朝鮮の偵察衛星打ち上げは今年初めて。打ち上げを続け、性能の向上を図る考えとみられる。
北朝鮮が偵察衛星打ち上げを日本政府に通告したのは27日未明。折しも同日午前にはソウルで日中韓首脳会談が約4年半ぶりに開かれるというタイミングだった。
北朝鮮は、長年後ろ盾となってきた中国から李強首相が訪韓し、日韓首脳との協力を演出する機会をあえて狙った可能性がある。北朝鮮への対応を巡り日韓との温度差を表面化させ、友好ムードに水を差すためだ。
サミットでは、日韓が北朝鮮の偵察衛星打ち上げ予告を非難した一方で、中国は北朝鮮に関する言及を避けた。韓国の専門家は「朝鮮半島情勢の主導権は自分たちにあることを示そうとした」と、北朝鮮の意図を解説する。北朝鮮外務省報道官は27日、共同宣言に「朝鮮半島の非核化」の文言が盛り込まれたことを「内政干渉だ」と批判した。
中国は、北朝鮮の衛星打ち上げや弾道ミサイル発射を擁護する姿勢を見せてきた一方、北朝鮮が「敵」とする米国とも不測の衝突回避のために対話を進めている。北朝鮮は、軍事協力を深めるロシアとの関係がより強固になる中で、日米韓と意思疎通を図る中国をけん制する思惑もありそうだ。
北朝鮮は昨年11月、初の軍事偵察衛星「万里鏡1号」の打ち上げに成功し、衛星は地球周回軌道に進入した。だが、敵の監視のためには複数の衛星が稼働する必要がある上、韓国政府は「偵察機能はない」と分析している。北朝鮮は今年中に偵察衛星を3基打ち上げると表明しており、発射を続け、偵察能力の確保を着々と目指す考えとみられる。