台湾で国会権限強化法案が可決=野党主導、頼総統に痛手 2024年05月29日 21時24分
【台北時事】台湾立法院(国会)で28日、野党が提出した立法院の権限を強化する関連法案が可決され、頼清徳総統にとって大きな痛手となった。頼政権と与党民進党は「憲法違反」と訴えているが、立法院で多数を占める野党が押し切った。立法院の権限が強化されれば、頼氏はますます難しい政権運営を強いられることになりそうだ。
法案は、最大野党・国民党と第3党・民衆党が共同提出。総統に立法院での定期的な政治報告を義務付けている。また、立法院の調査権拡大と併せて、「国会侮辱罪」も新設。公務員や民間人が立法院での証言を拒否したり、資料提出を拒んだりすれば処罰される可能性がある。
台湾では、日本の特定秘密保護法に当たる情報漏えい防止の法整備が行われていない。政府関係者の間では「台湾が自主開発した潜水艦や、半導体の機密情報が野党を通じて中国に漏れやすくなる」と懸念する声が上がっている。
民進党は、法案について、憲法が定める立法院の権限を逸脱すると主張。審議の継続を求めたが、野党の賛成多数で法案は可決された。
法案の可決を受け、卓栄泰・行政院長(首相)は声明を出し「(法案の)内容に憲法上の論争がある」と指摘し、再審議を求める方針を示した。卓氏は29日、立法院を訪れ、国民党の韓国瑜・立法院長(国会議長)と会談。再審査に応じるよう働き掛けたとみられる。
ただ、1月の立法委員(国会議員、定数113)選で与党・民進党は過半数を失い、国民、民衆両党は計60議席を獲得。再審査が行われても、法案の成立を阻止することはほぼ不可能だ。このため、民進党は世論に法案反対を訴える一方、成立後に司法院大法官会議(憲法裁判所)に違憲審査を求める構えだ。