シリア再生、道半ば=政権崩壊半年、孤立脱却急ぐ 2025年06月07日 14時20分

シリアのシャラア暫定大統領=5月7日、パリ(EPA時事)
シリアのシャラア暫定大統領=5月7日、パリ(EPA時事)

 【イスタンブール時事】シリアでアサド独裁政権が崩壊して8日で半年。旧反体制派主導で発足した暫定政府は米欧や近隣各国との関係修復に奔走し、旧政権下での国際的孤立から脱却を急いでいる。一方、多様な民族、宗教宗派が安全に共存できる国造りは道半ば。政権移行期における経済復興も大きな課題だ。
 1月に就任したシャラア暫定大統領は、国際テロ組織アルカイダの流れをくむ旧反体制派「シャーム解放機構」(HTS)の元指導者。当初は国を束ねる政治力が疑問視された。就任後は旧政権の憲法や国会を停止し、正規軍以外の武装解除や軍・治安機関の再編に着手。シリア北東部を実効支配するクルド勢力と統合で合意するなど、権力の集中を進める。
 外交面では旧反体制派を支援した隣国トルコのほか、サウジアラビアやカタールなど湾岸諸国と関係を深め、旧政権を支えたロシアやイランの影響力を排除。穏健路線への転換が奏功し、5月には米国や欧州連合(EU)も相次ぎシリア制裁解除を表明した。
 米国やカタールなどの企業連合は5月下旬、新生シリアに天然ガスや太陽光の発電所を建設する総額約70億ドル(約1兆円)の覚書に調印。暫定政府のバシル・エネルギー相は「制裁解除で全分野の投資の新たな地平が開かれた」と述べ、国際社会への復帰を強く印象付けた。
 ただ、治安の回復が遅れ、宗派対立の激化を招きかねない火種が各地でくすぶる。3月には北西部一帯で暫定政府の治安部隊と旧政権残党が衝突。アサド前大統領と同じ少数派イスラム教アラウィ派の住民が報復対象となり、1000人以上が殺害された。4月下旬にも首都近郊のイスラム教少数派ドルーズ派が多い地域で衝突が起きた。
 隣国イスラエルは「ドルーズ派保護」を名目にシリア領内を空爆。シリア南部では地上での軍事作戦も展開した。
 独裁や内戦で荒廃したシリアの復興費用は最大4000億ドル(約57兆円)と推計される。ペデルセン国連特使(シリア和平担当)は「シリアは甚大な試練に直面し、紛争再燃や国家分断の危険性は今も克服できていない」と指摘。国際的な支援継続が不可欠だと訴えている。 

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