トランプ関税、影響じわり=米で値上げ、投資手控え 2025年06月07日 14時52分

米ニューヨークの食料品店で野菜を選ぶ女性=4月9日(EPA時事)
米ニューヨークの食料品店で野菜を選ぶ女性=4月9日(EPA時事)

 【ワシントン時事】6日に発表された5月の米雇用統計は、労働市場が底堅さを保っていることを示した。だが、トランプ政権の高関税政策により、企業は輸入品の価格上昇を受けて製品の値上げに着手。投資に慎重な姿勢も目立っており、関税政策の経済への影響が徐々に広がりそうだ。
 雇用統計によれば、5月の失業率は3カ月連続で4.2%と低い水準だった。景気動向を反映する非農業部門の就業者数は前月比13万9000人増と、市場予想を上回る堅調な内容となった。
 また、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は、4月が前年同月比2.1%。FRBが目標とする2%へと下がる傾向が続いており、現時点で高関税政策の影響は見られない。
 FRBはインフレ再燃リスクを警戒し、金融緩和には慎重だが、トランプ大統領は「インフレは死んだ」と宣言。景気拡大や株価上昇を狙い、FRBに繰り返し利下げを要求している。
 だが、高関税が物価を押し上げるのはこれからとの見方が多い。FRBが4日公表した全米12地区の景況報告は、関税に伴うコスト増を製品価格に転嫁しようとしている企業は「3カ月以内」に実施するとの見通しを示した。
 関税政策の不確実性も企業に投資を踏みとどまらせている。リッチモンド連邦準備銀行の企業調査では、対象の47%が設備投資の中止または延期を迫られたと回答した。クックFRB理事は「関税の影響は既に顕著だ」と警戒している。
 もっとも、労働市場が安定しているため、FRBは利下げのタイミングを見極める余裕がありそうだ。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は6日、インフレ動向などを観察し、「(今年後半に)利下げを予想できる」と語った。 

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