「開放的な中国」猛アピール=対米念頭、ビザ免除急拡大―恣意的運用も・習政権 2025年06月08日 05時59分

【北京時事】中国の習近平政権が、入国時のビザ(査証)免除対象国を急拡大している。「米国第一主義」の下、排外的な政策を連発するトランプ米政権とは対照的に「開放的な中国」を猛アピール。対中投資の促進や外国人観光客の受け入れ体制整備を加速させている。
「中国は高水準の対外開放を進める。人的往来の円滑化により、オープンな世界経済構築に尽くす」。中国外務省の林剣副報道局長は3日の記者会見でこう述べ、中国が一方的にビザを免除している国が欧州など43カ国に達したと胸を張った。
中国はコロナ禍前、相互に免除している国以外では、日本など3カ国のみにビザなしでの短期滞在を認めていた。対象を広げ始めたのは2023年後半。約3年間続いた「ゼロコロナ」政策で落ち込んだ観光収入の回復が主な狙いだった。今年1月の第2次トランプ政権発足前後からは、ソフトパワー強化で米国に対抗する側面が大きくなっている。
トランプ政権は5月、ハーバード大学の留学生受け入れ禁止措置を講じた。今月4日にはイランやミャンマーなど12カ国からの入国を禁じると発表するなど排外主義的な傾向を強めている。これに対し中国は今月、米国の「裏庭」とも呼ばれる南米の5カ国にビザ免除を適用。東南アジア11カ国には、5年間有効で一度に180日間滞在できるビジネス関係者向けのビザ発給を始めると表明した。
米調査会社モーニング・コンサルトによると、日本やカナダ、ロシアなど41カ国を対象とした調査で、中国の好感度が今春、初めて米国を上回った。トランプ大統領が各国への相互関税を発表した4月以降、中国への好感度が急上昇したといい、習政権には追い風だ。
中国政府によると、24年の外国人旅行者は2694万人。19年比で8割強まで回復したが、伸びしろは大きい。
ただ、中国のビザ政策には恣意(しい)的な側面も目立つ。日本はもともと短期ビザは免除されていたが、コロナ禍をきっかけにビザ取得を義務付けられた。その後、免除対象が各国に広がる中でも取り残された。
再開されたのは昨年11月。米大統領選でトランプ氏が当選し米国の対中政策が一層硬化することを懸念し、対日関係の改善を急いだことが一因だ。中国はビザ免除に当たって、1年間など暫定的な期限を設けることが多く、相手国との関係によって見直せる余地を残している。