湾岸諸国、事態沈静呼び掛け=米軍事介入で標的リスク―イラン弱体化歓迎の指摘も 2025年06月21日 18時19分

カタールのアルウデイド空軍基地に駐機する米軍機=2024年3月、ドーハ近郊(AFP時事)
カタールのアルウデイド空軍基地に駐機する米軍機=2024年3月、ドーハ近郊(AFP時事)

 【カイロ時事】イスラエルとイランの交戦を巡り、サウジアラビアなど中東の湾岸諸国は事態沈静化を呼び掛けている。米国が軍事介入すれば、米軍が駐留する湾岸諸国もイランの攻撃対象になりかねないためだ。一方で各国は、代理勢力の存在も含めイランを潜在的脅威と見なしており、本音ではイスラエルの攻撃で弱体化するのを歓迎しているとの指摘もある。
 「地域全体の平和と安定に及ぼす深刻な結果について強い懸念を表明する」。サウジなどアラブ・イスラム諸国の外相は16日の共同声明で、イラン攻撃を開始したイスラエルを非難しつつも、「外交と対話が地域の危機を解決する唯一実現可能な方法だ」と強調し、これ以上の衝突激化を回避するよう訴えた。
 サウジやアラブ首長国連邦(UAE)、カタールやオマーンなど、ペルシャ湾を挟んでイランの対岸に位置する湾岸諸国は、イラン側と接触を続けている。カタールやサウジなどには米軍が駐留する基地があり、米国が軍事介入した場合に、イランやその代理勢力はこれらの基地に反撃する構えを示している。湾岸諸国には「対岸の火事」が飛び火する前に、事態収拾を図りたい思惑がある。
 だが、エジプトのオラビ元外相は湾岸諸国について、実際には「米国が湾岸の安全を保障する限り、(攻撃を受ける)代償を払っても、イランの弱体化を望んでいる」と分析する。
 イスラム教スンニ派の盟主を自任する親米国家のサウジは、シーア派の地域大国イランと長年対立。サウジが2015年に軍事介入したイエメン内戦では、サウジが支援する暫定政権と親イラン武装組織フーシ派が戦闘を繰り広げ、サウジとイランの代理戦争の様相を呈した。
 サウジは19年に石油施設が無人機攻撃に遭い、石油生産に深刻な打撃を受けた。イエメン内戦も泥沼化し、サウジはイランとの関係改善を模索。23年にはイランと7年ぶりに関係を正常化させたが、イランに対する警戒を解いたわけではない。
 イスラエルは23年に始まったパレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとの衝突以来、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやフーシ派といったイランの代理勢力にも打撃を与えた。昨年12月にはシリアで親イランのアサド政権が崩壊した。
 イランが中東各地で軍事・財政面で支援する代理勢力は地域情勢を悪化させる要因で、石油輸出以外にも経済の多角化を急ぎたいサウジなどにとっては厄介な存在だ。中東におけるイランの影響力低下は、湾岸諸国にとっても悪い話ではないのが実情だ。 

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