功名心にはやるトランプ外交=米ロ首脳会談 2025年08月16日 15時27分

トランプ米大統領が、血みどろのウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領を自国に迎えて会談に臨んだ。2期目就任以降、多くの紛争を鎮めたと誇るトランプ氏が目指したのは、3年半にわたるウクライナでの戦闘の停止。しかし、功名心にはやるトランプ氏の「仲介外交」は大きな危険をはらんでいる。
「私が最も誇りとするレガシー(政治的遺産)は、平和の構築者、団結をもたらす者ということになる」。トランプ氏は1月の就任演説で、調停者として名を残したいという意欲を隠さなかった。7月にはノルウェーのストルテンベルグ財務相に電話し、ノーベル平和賞を受賞したいと伝えたとされる。
こうした野心は、非現実的な政策にたどり着く。トランプ氏はパレスチナ自治区ガザを「所有」した上で、地中海沿岸の保養地になぞらえ「中東のリビエラ」に変える構想を表明した。実際は、ガザの人道状況はイスラエルの軍事作戦で「想像を絶する領域」(日欧外相声明)に達している。
トランプ氏が今回の会談に先立ち、ウクライナや欧州の同盟各国と入念に擦り合わせた形跡はない。一方で、プーチン氏を「天才」とたたえ、強権的手法で国を統治する同氏への共感を隠さない。会談後には、ウクライナのゼレンスキー大統領に「ディール(取引)」に応じるよう助言すると言い放った。
透けるのは、大国のみで国際情勢を取り仕切ろうという意図だ。こうした姿勢は、欧州だけでなく、大国・中国が近隣諸国を威圧するアジア情勢にも影響を与えずにはおかない。
トランプ氏が模範とするレーガン元大統領は1986年にレイキャビクで行った旧ソ連のゴルバチョフ共産党書記長との会談で、戦略防衛構想(SDI)の放棄という要求を拒否し、譲歩を引き出した。トランプ氏が侵略を正当化するプーチン氏の論理をはねつけ、公正な和平をもたらすことができるかが問われている。