米、多様性めぐる「検閲」で論争=トランスジェンダーの女神像 2025年08月09日 17時54分

【ワシントン時事】米国を象徴する「自由の女神」像に関連する芸術作品が、米社会を分断する論争を呼んでいる。女神像と同じポーズを取った、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの黒人女性の肖像画が、首都ワシントンの美術館で展示を禁じられたためだ。トランプ政権が進める多様性の否定が「表現の自由」にも及んだ格好だ。
論争の中心となっているのは画家のエイミー・シェラルドさん。ミシェル・オバマ元大統領夫人の公式肖像画を描いた米国を代表する画家の一人だ。
シェラルドさんの巡回展覧会は当初、9月からワシントンの国立肖像画美術館で開かれる予定だった。しかし、この肖像画が美術館から展示を禁じられた。シェラルドさんは「検閲だ」と反発し、当該作品の展示だけでなく、ワシントンでの展覧会開催自体を中止した。
主要メディアは7月下旬に一斉にこれを報道。米誌ニューヨーカーは最新号の表紙にこの肖像画を掲載し、「連帯」を表明した。シェラルドさんはSNSで「自由に条件が付けられた場合、芸術は主張し続けなければならない」と述べ、同誌に謝意を示した。
トランプ大統領は1月の就任以来、トランスジェンダーなどの性の多様性を否定してきた。3月には大統領令で、ワシントンの国立美術館・博物館などに黒人・女性差別の歴史を含む「連邦政府の政策と矛盾する展示」を禁止した。
FOXニュースによると、バンス副大統領がシェラルドさんの肖像画展示に反対した。ハリガン大統領特別補佐官はFOXへの声明で「この作品はわれわれの国で最も神聖な象徴の一つを、分断的・イデオロギー的視点で再解釈したものだ」と主張し、展示禁止を正当化した。