ガザ停戦交渉、影響不可避=イスラエル攻撃に猛反発―カタール 2025年09月10日 15時41分

【イスタンブール時事】イスラエルが9日に中東のカタールでイスラム組織ハマスの幹部を標的とする攻撃を行ったことを受け、カタール政府は強く反発している。カタールは、パレスチナ自治区ガザの停戦に向けた交渉の仲介役を担ってきたが、イスラエルへの対抗措置を示唆。ガザ停戦交渉への悪影響は避けられそうにない情勢だ。
カタールのムハンマド首相兼外相は9日の記者会見で、イスラエルの攻撃は「裏切りだ」と憤りを鮮明にした。ガザ停戦交渉の妨害を画策したイスラエルが、防空レーダーで探知されない兵器を使ったと批判。さらに「米当局者からの通告は攻撃の10分後だった」と語り、同じく仲介役を務める米国に対しても不快感を示した。
イスラエルのネタニヤフ政権は2023年10月のハマスによる奇襲後、ハマス壊滅を目指してガザへ侵攻。ガザにとどまらず、ハマスと連帯する各地の親イラン組織を弱体化させるため、隣国レバノンやイエメン、イランへと攻撃対象を拡大してきた。
イスラエルはカタールとの国交はないものの、米軍基地が所在するカタールを「敵国」と認定していない。一方、ハマスはカタールに政治部門の拠点を置く。カタールはイスラエルへの徹底抗戦を続けるハマスに圧力をかけ、停戦受け入れを促してきた。
それだけに、イスラエルによる突然の攻撃を防げず、ハマスのメンバー5人が殺害され、カタールは「庇護者」としての面目をつぶされる事態となった。イスラエルだけでなく、ハマスとの関係も変化しかねない。
イスラエルによるカタール国内への軍事攻撃は初めてとみられ、カタールの衝撃は大きい。ムハンマド氏は「国家主権の侵害には全ての手段で立ち向かわなければならない」と強調した。同国のタミム首長は9日、ネタニヤフ氏と対立するトルコのエルドアン大統領と電話会談し、イスラエルに対して厳しく臨む方針で一致した。
ただ、カタールがイスラエルにどこまで強硬な態度を取れるかは明確ではない。小国のカタールは現実的な全方位外交で知られ、各地の紛争解決に貢献してきた。反イスラエルを鮮明にすれば、カタールの「中立性」が損なわれ国際社会での存在感を失うことにもつながりかねず、対応に苦慮しそうだ。