USスチール、日鉄の買収案諮る=12日に臨時総会、政治問題化で暗雲も 2024年04月07日 15時29分

USスチールの工場=2018年、米ペンシルベニア州(AFP時事)
USスチールの工場=2018年、米ペンシルベニア州(AFP時事)

 【ニューヨーク時事】米老舗鉄鋼メーカーUSスチールは12日、臨時株主総会を開き、日本製鉄による買収案を諮る。買収額が2兆円と足元の時価総額を大きく上回ることから、議案は承認される公算が大きい。ただ、秋の大統領選をにらみ、民主党のバイデン大統領と、返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領が共に反対を表明するなど、米国内で政治問題に発展し、買収実現には暗雲が立ち込めている。
 日鉄は昨年12月、USスチールの全株式を取得し、今年9月までに子会社化する計画を発表した。USスチールの大株主である米投資会社ペントウォーター・キャピタル・マネジメントは、買収額や日鉄による雇用創出の可能性などを踏まえ、「すべての利害関係者の利益となる」と評価。米議決権行使助言会社グラスルイスなども株主に賛成を推奨している。
 株主が統合を認めたとしても、多くの不確定要素が残る。日鉄が買収に絡んだ人員削減を行わない方針などを示したのに対し、全米鉄鋼労組(USW)は「空約束だ」と反発を強める。大統領選で労組票を獲得したい思惑から、バイデン、トランプ両氏が買収にそろって異を唱えていることも足かせとなっている。
 買収を巡っては、鉄鋼サプライチェーン(供給網)強化に資するとの見方がある一方、「安全保障に悪い影響がある」(民主党のブラウン上院議員)との懸念も聞かれる。米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)は安全保障への影響について審査している。
 日鉄に逆風が吹き付ける中、CFIUSの審査通過や独禁当局による承認といった多くの関門が待ち受けており、買収は一筋縄ではいかない可能性もある。 

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