植田日銀、1年の評価は=副総裁経験者2人に聞く(上) 2024年04月08日 19時36分
日銀総裁に植田和男氏が就任して1年となる。マイナス金利政策を解除し、11年続く大規模金融緩和に終止符を打った「植田日銀」の政策運営をどう評価するのか。日銀副総裁経験者である中曽宏・大和総研理事長(副総裁任期2013年3月から18年3月)と若田部昌澄・早大教授(同18年3月から23年3月)の2人に聞いた。
◇緩和正常化「歴史的転換点」
中曽宏大和総研理事長
―日銀の植田和男総裁は3月に17年ぶりの利上げを決めた。
エネルギー価格上昇と円安進行による物価高が約30年ぶりの高い賃金上昇率へ道を開いた。今回は政策変更に先立ち、幹部の発言などでかなり周到に市場への織り込みを促した。これにより、緩和政策の正常化に向け円滑に第一歩を踏み出すことができた。歴史的転換点だ。
―先行きの政策運営は。
今後、継続的に利上げをしていくとみているが、経済や市場へのショックを回避する観点からも、ゆっくりと慎重に進めるだろう。
―消費者物価の動向は。
サービス価格の上昇を主因に2%台の上昇が続くのではないか。賃上げ圧力がそれなりに強いほか、需給ギャップの改善も物価を下支えする。2024年度から25年度にかけて、日銀の物価目標の2%に向けて収れんしていくとみている。
―過去の大規模緩和は効果があったのか。
これまでの金融政策の累積的な緩和効果がなければ、今の賃金と物価の好循環の強まりが実現することはなかっただろう。各種の緩和策はその使命を果たした。
―日銀は国債を大量に抱え込んだ状態だ。
日銀が保有国債の圧縮を始めるまでには、しばらく時間を置くことになるのではないか。ただ、国債の発行残高の半分を日銀が保有している状況はどう見ても不自然だ。いずれ、市場機能が回復する水準までは残高を縮小するべきだ。