実質賃金、プラスは夏以降か=リーマン時に並ぶ23カ月連続減―2月調査 2024年04月08日 19時21分

東京都内の横断歩道を渡る人たち(EPA時事、資料写真)
東京都内の横断歩道を渡る人たち(EPA時事、資料写真)

 8日発表された2月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)は、物価の変動を反映させた実質賃金が前年同月比1.3%減と、23カ月連続のマイナスとなった。これは2008年秋のリーマン・ショックを挟んだ07年9月~09年7月に並ぶ過去最長だ。市場では、実質賃金のプラス転換は、高水準の賃上げが続く24年春闘の結果が反映される今夏以降となるとの見方が大勢だ。
 2月の実質賃金がマイナスとなったのは、名目賃金の伸びが物価高に追い付いていないため。基本給と残業代などを合わせた名目賃金は、労働者1人当たり平均で1.8%増の28万2265円と、26カ月連続でプラスだった。ただ、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)の上昇率が3.3%と1月から拡大したことで、生活実感に近い実質賃金が目減りした。
 賃上げ率が5%超と、33年ぶりの高水準となっている24年春闘の結果は4月以降、徐々に調査に反映されるとみられ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「実質賃金は夏以降にプラスに転じる」と見通す。
 ただ、雇用の約7割を占める中小企業の春闘結果は今後判明するほか、労働組合が組織されていない企業も多い。食品や日用品など生活に身近な商品では値上げが続いており、小林氏は「消費者が賃金上昇(の恩恵)を実感するには時間がかかる」と指摘する。
 持続的な賃金上昇に向けては、人件費の負担増をカバーする企業業績の向上が不可欠だが、実質賃金のプラス転換が消費拡大による収益向上につながるかは不透明。政府の掲げる「成長と分配の好循環」は道半ばだ。 

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