遠のく新たな純国産機開発=首脳会談、米に配慮も―空自機、共同生産追求・防衛省 2024年04月20日 14時14分
今月開催された日米首脳会談では、航空自衛隊の次期ジェット練習機について共同開発・共同生産を追求することで一致した。同盟強化の名の下、日本の航空産業の技術を結集させる新たな純国産機開発は遠のく形となった。
次期ジェット練習機は、空自が現在約200機保有するT4ジェット練習機の後継に当たり、共同開発は米側にはビジネスチャンスになる。岸田文雄首相は訪米中、経済面での日本の貢献を強調しており、米軍需産業への配慮もにじむ。
T4練習機は、機体が川崎重工業、エンジンはIHI製の純国産機。導入から40年近くなり、総額43兆円の防衛力整備計画(2023~27年度)では「T4後継機の整備を実施する」と記載。純国産なら、中小企業を含めて幅広い部品供給網で支える生産体制となる。
防衛装備庁はこれまでに180億円超を投じてコンパクトな高推力エンジン「XF9」を研究し、IHIに発注して試作。最大推力15トン以上で、米軍ステルス戦闘機F22に搭載されるエンジンに匹敵する。空自の次期戦闘機が英国、イタリアとの共同開発になったことから、航空機産業界からは「技術基盤の維持・強化のため練習機は純国産」を期待する声があった。
しかし、首脳会談の共同声明は「安全保障協力の強化」を掲げ「日米共通のジェット練習機の共同開発・生産の機会を追求する」と明記。共同開発なら国内企業の分担率に影響するが、米側は雇用創出につながる。T4は1機約25億円。現有並みに約200機生産すれば、単純計算でも後継機は総額5000億円の規模になる。
米国ではボーイング社やロッキード・マーチン社が練習機を開発、販路拡大を目指す。米空軍にはボ社とスウェーデン・サーブ社が共同開発した高等練習機「T7A」が導入される。政府関係者は「防衛力整備計画の43兆円の中で共同開発を追求できる新規大口は空自練習機の後継機しかない」と話す。与党の一部からは「日本全体のサプライチェーンを考えているのか」と共同開発に疑問を呈する声もある。
木原稔防衛相は12日の記者会見で、次期練習機開発に関して「共同開発を決定しているわけではないが、その機会を追求しようということで幅広い観点から一致した」と説明。「リスクやコストを分担する意味で、ジェット機や戦闘機の国際共同開発は主流になっている」と述べた。