「奪われたもの取り戻す」=ジャム・カシミール元州首相インタビュー―インド 2024年05月13日 18時41分
【スリナガル時事】インド北部の解体されたジャム・カシミール州で2009年から15年まで州首相を務めたオマル・アブドラ氏が時事通信のインタビューに応じた。19年の自治権剥奪により「全てが変わった」といい、「奪われたものを取り戻すまで戦い続ける」と語気を強めた。
アブドラ氏はかつて長く州政権を担ってきた地域政党「国民評議会」の幹部。今回の総選挙でスリナガルとは別のカシミール地方の選挙区から立候補している。自治権剥奪当時、「公共秩序を乱した」という理由で当局に身柄を拘束された経験を持つ。
同氏は「歴史上、州から連邦直轄地に格下げされた唯一の領土だ。州の住民や議会の同意なしに二つに切り分けられた。その後何も改善されず、開発や雇用といった状況を見ても他の地域と比べ低迷し続けている」と窮状を訴えた。
モディ首相率いる与党インド人民党(BJP)は今回、スリナガルを含むカシミール地方の三つの選挙区に候補者を擁立していない。「BJPは自治権剥奪後の状況に『皆満足している』と主張しているが、そうであれば候補者を立てるはず。立てないのは言っていることと現場で起きていることが全く違うからだ」と批判する。
モディ政権が当時、自治権剥奪の理由にパキスタンと領有権を争うカシミール地方の治安改善や経済活性化を挙げていたことについて、「テロや過激派は依然として大きな懸念」と指摘。また、「経済発展のために(剥奪が)必要だったとは思わない」と語る。
発展のため日本を含む外国からの投資に期待しつつも「地域の移動は簡単ではなく、国外の人が投資先として検討するのは困難」と指摘。「安全ではないという認識を変えることがまず必要だ」という。
一方、「観光や農業などの分野はもともと優位性がある。水力発電は地域経済を変革できる分野だ」と強調。昨年には地域で電気自動車(EV)の電池などに用いられる推定590万トンのリチウムの鉱床が見つかっており、「私たちの土地から生まれたものだ。どのような用途だろうと産業拠点は地域内に設立されなければならない」と述べた。