南アで総選挙、民主化30年=与党低迷、初の過半数割れも 2024年05月28日 16時30分
【ロンドン時事】南アフリカで29日、国民議会(下院、定数400、任期5年)選挙が行われる。今年は、アパルトヘイト(人種隔離)が撤廃され、1994年に全人種が参加して民主的な総選挙が初めて実施されてから30年となる節目の年。この間一貫して政権を担ってきた与党アフリカ民族会議(ANC)は、高失業率や汚職問題などを巡る国民の不満を背景に人気が低迷。今回初めて過半数割れに陥る可能性も浮上している。
内外の尊敬を集めた初代黒人大統領ネルソン・マンデラ氏(2013年死去)が率いたANCは、アパルトヘイト撤廃を導いた実績によって広く国民の信頼を得てきた。しかし、近年は党内抗争や政府高官の汚職疑惑でイメージが悪化。雇用や治安状況に改善が見られず、インフラ老朽化による停電の頻発などで生活難が続く中、政府の実務能力にも大きな疑問符が突き付けられている。
アパルトヘイトを知らない若い世代も増えており、ANCの支持離れが拡大。直近の世論調査では支持率が40%台に低迷している。前回19年選挙の得票率は民主化後最低の約57%だったが、今回はさらに大幅に下回るという予想が出ている。野党勢力が分裂しているため、ANCが第1党の座を失うことはなさそうだが、他党と連立政権を組む事態も想定されている。
ANC議長(党首)のラマポーザ大統領は選挙運動の演説で「われわれはもっと良い仕事をする。国民をまとめられるのはわが党だけだ」と胸を張った。しかし、報道によると、地元専門家の間ではANCに対し「得票率5割を超えるとは思えない」「非常に追い詰められている」と、厳しい見方が広がっている。