駐日インド大使寄稿全文 2024年08月14日 18時06分
78回目のインド共和国独立記念日に当たり、天皇皇后両陛下、日本政府、国民の皆さま、在日インド人、日本にいるインドの友人に心からごあいさつ申し上げる。
インドは独立以降、活発な民主主義、経済の復元力、科学的進歩、世界各国に支えられ、驚異的な変化と成長を遂げてきた。今年は、有権者9億人超による史上最大の総選挙を成功裏に実施し、代議制政治への決意を示した。
インドは、ビジネス改革の容易さ、外国投資の増加、スタートアップ環境の整備を通じ、急速な成長を見せてきた。「メーク・イン・インディア(インドでものづくりを)」の方針は製造業を強化し、ITやデジタル技術といったサービス産業は世界をけん引している。史上初めて月の南極付近に着陸した(無人月探査船)「チャンドラヤーン3号」の成功や、国産の新型コロナウイルスワクチン開発は、科学的に優れた能力を表している。再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及を促進し、持続可能な発展や気候変動対策に真摯(しんし)に取り組んでいる。生体認証システムである(インド版マイナンバー)アーダールや、統一決済のシステムは、遠隔地でも行政サービスや金融システムへの参加を劇的に進め、社会的指標のはっきりとした改善につながっている。
インドは2023年の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)議長国を務めたように、国際的に責任ある建設的な大国となった。サミットの成果文書には、包摂的な成長、持続可能な発展、多国間協力への決意が盛り込まれた。議長国の任期中は、新興・途上国「グローバルサウス」の優先課題を重要議題として取り上げた。
24年、共通の価値観や相互の尊重に基づく「印日特別戦略的グローバルパートナーシップ」は10周年の節目を迎えた。モディ首相と岸田文雄首相の会談など、再三にわたる多層的な交流を通じ、2国間関係は強化されている。2国間貿易額は220億ドル(約3兆2000億円)を超え、27年の日本の対印投資目標は5兆円で、インドの経済成長や雇用創出に重要な貢献をしている。
科学技術分野での連携も進み、人工知能(AI)や量子コンピューター、半導体、バイオ技術に関しては画期的な革新が生まれる素地が整っている。印日デジタルパートナーシップは、新興技術やサイバーセキュリティー、デジタルインフラでの協力を発展させ、宇宙分野では月極域探査ミッション(LUPEX)が連携の範囲を拡大させている。
合同演習や戦略対話を通じ、防衛分野での協力も強まっている。物品役務相互提供協定(ACSA)はこの協力関係をさらに促進してきた。
両国の若者の絆を育む教育や人材育成面の人的交流は、関係の基盤となる。印日観光促進年2.0「ヒマラヤと富士山をつなぐ」は、これまで培われた交流の成果を引き継いでいる。
印日は「インド太平洋イニシアチブ」、「自由で開かれたインド太平洋」構想の相乗効果や、(印日米豪4カ国の枠組み)「クアッド」での協力を通して、顕著なビジョンの一致を見せている。
インドは独立100周年までの期間、(「黄金の25年間」を意味する)「アムリットカール」の歩みを着実に進めており、世界の責任あるパートナーとしての潜在力は高まり続けている。これは力強い経済成長、将来的に世界の労働力を担う人口、気候変動や平和維持活動への取り組みに支えられている。国際会議の場では、平等な代表制や、21世紀の実情を反映した国際機関の改革を提唱している。
共通の価値観と相互尊重に基づく印日の永続的な友好関係は、互いを補い合い、より平和で繁栄した持続可能な世界を追求することにより、さらなる協力強化の潜在力を持っている。
インドが独立記念日を祝うに当たり、日本との特別な関係に思いをはせ、日本国民の皆さま、政府との揺るぎない友情に感謝申し上げる。印日関係は将来も発展、緊密化を続け、インド太平洋の平和や安定、繁栄に、国際社会の改善に貢献するだろう。