米、金融緩和局面へ=雇用が急失速 2025年09月06日 14時50分

 【ワシントン時事】5日発表の8月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比2万2000人増と、市場予想を大きく下回る低調な内容だった。雇用の伸びが急速に勢いを失う中、連邦準備制度理事会(FRB)が16、17両日の次回金融政策会合で利下げを決め、金融緩和局面に入るとの観測が強まっている。
 5月以降の就業者数の増加は月平均で2万人台半ばと、10万人超を記録していた春先と比べ、失速は明らかだ。8月の雇用統計を踏まえ、ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長は記者団に「期待外れだ」と述べ、失望を隠さなかった。
 失業率も前月から0.1ポイント上昇し、4.3%にじわり悪化。労働市場の想定以上の弱さを受け、金融市場ではFRBが年内の残り3会合すべてで0.25%の利下げを行うとの見方が浮上。ハセット氏は、FRBが次回会合で0.25%よりも「大幅な引き下げを検討する」と予想した。
 特に、トランプ大統領が振興に力を入れる製造業が振るわない。相互関税導入など「トランプ関税」が本格化した4月以降、製造業の就業者は計4万2000人減少。「関税を巡る不透明感による、企業投資の弱まりを受けた可能性がある」(米金融大手)との声も上がる。
 だが、トランプ氏は5日、製造業での雇用減少について記者団に「金利が高過ぎる。FRBの問題だ」と語り、責任を転嫁。SNSへの投稿でも「『遅過ぎ』パウエル(FRB議長)はかなり前に利下げすべきだった」と、改めて批判した。
 一方、関税引き上げで米国の物価は上昇傾向にある。変動の激しいエネルギーや食品を除いたコア項目のインフレ率は「目標の2%よりも、3%に近い」(FRB高官)と、懸念は根強い。11日に公表される8月の消費者物価指数(CPI)も、今後の利下げペースを占う手掛かりとなりそうだ。 

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