博物館モスク化、対立の火種=ギリシャ苦言、トルコは反論 2024年05月18日 05時40分
【イスタンブール時事】トルコ最大都市イスタンブールにあるカーリエ博物館が今月、約4年にわたる改装作業を終え、モスク(イスラム礼拝所)として一般向けに開放された。元はキリスト教会の聖堂で、イエス・キリストや聖母マリアを描いたビザンチン美術の傑作とされるモザイク画やフレスコ画が多数残る建物だけに、隣国ギリシャはモスク化に反発。歴史的に対立を繰り返してきた両国間の新たな火種になる懸念も出ている。
かつて「コンスタンチノープル」と呼ばれたイスタンブールは、ギリシャ正教会の中心地でビザンチン帝国の首都だった。15世紀にトルコの前身オスマン帝国に制圧された歴史的経緯がある。
「カーリエモスク」となった聖堂は5~6世紀ごろ建てられ、オスマン帝国下の16世紀にモスクへ変更。政教分離を掲げるトルコ共和国成立後の1945年に博物館となった。イスラム色の強いエルドアン大統領が2020年、同じく博物館だった世界遺産アヤソフィアをモスクに変えた直後に、カーリエもモスクへの変更が決まった。
今月13日にトルコを訪れたギリシャのミツォタキス首相は、モスク化に「再び礼拝の場所になったのは残念だ」と苦言を呈した。これに対し、エルドアン氏は「文化遺産の保護において、トルコは模範的な国だ」と反論した。
改装後のカーリエモスクは、ドーム内の天井などに描かれた鮮やかなフレスコ画を一目見ようと、観光客でにぎわっていた。一方、礼拝部屋にあるモザイク画は、壁と同系色の覆いで隠されていた。初めて礼拝に来たという大学教授ビュレント・デイルメンジさん(48)は「イスラムに適さなくても、元の形や壁画は保存されている。トルコの寛容さの表れだ。これがギリシャだったら全て壊されただろう」と話した。