存在感向上で「高評価」=蔡英文総統が退任―台湾 2024年05月19日 18時40分

台湾総統府を訪問した芸能人と面会する蔡英文総統(右)=15日、台北(総統府提供)(AFP時事)
台湾総統府を訪問した芸能人と面会する蔡英文総統(右)=15日、台北(総統府提供)(AFP時事)

 【台北時事】台湾の蔡英文総統(67)は20日、2期8年の任期を終えて退任する。在任中、中台関係について統一でも独立でもない「現状維持」路線を堅持。米国や日本など民主主義国との連携を強化した。半導体関連の台湾企業の躍進もあり、史上初の女性総統は国際社会で台湾の存在感を高めた。
 台湾の民間団体「台湾民意基金会」が4月に実施した世論調査では、50.1%が蔡氏8年の政権運営を評価した。「国防」や「年金改革」を支持する声が多かった。主要紙・聯合報は、民進党の陳水扁元総統、国民党の馬英九前総統よりも「高い評価」を得たとしている。
 学者出身の蔡氏は2000年に陳政権で対中政策を担当する閣僚級の大陸委員会主任に起用され、04年に民進党に入党。12年総統選では当時現職の馬氏に及ばなかったが、16年総統選では、中国寄りの政策や景気悪化で支持を失った国民党から政権を奪った。
 総統就任後は、中国と距離を置き、米国との安全保障協力を強化した。潜水艦などの自主開発も推進。対日関係も重視し、しばしば日本語でX(旧ツイッター)に投稿した。中国の習近平政権は、蔡政権を「台湾独立派」と敵視。経済協力をてこに台湾と外交関係を持つ各国の切り崩しに動いた。蔡氏の就任時に台湾と外交関係を持つ国は22カ国だったが、現在は12カ国になっている。
 一方、内政面では、半導体など成長産業を軸に経済発展を促した。しかし、物価高に賃上げが追い付かず、経済成長の恩恵を受けられない人々の不満が高まった。蔡氏は退任直前の19日夜、自身のフェイスブックで「多くの挑戦と試練があったが、国家をより良くするという信念の下、私たちは台湾の進歩と変化を目の当たりにした」と振り返った。
 柔和な印象が強い蔡氏だが、「仕事では怖いくらい厳しい」(政府関係者)という一面もある。台湾メディアによると、総統府で面会した芸能人に退任後に訪れたい場所を問われ、「東京の街を歩くのが好きだが、政治家としてふさわしくない」と語った。 

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