ウクライナ大統領在任5年超え=「正統性」ロシアが問題視 2024年05月21日 14時12分
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、就任から5年を迎えた。本来なら任期5年の満了日だが、ロシアによる侵攻を理由に戒厳令を延長し、3月に予定された大統領選も先送りしたため当面留任。ロシアは、選挙を経ないゼレンスキー政権の「正統性」「合法性」を問題視する情報戦を展開し、隣国を揺さぶろうとしている。
英BBC放送によると、ゼレンスキー氏の留任は「戒厳令で選挙は不可」とうたう憲法が根拠。しかし、大統領選ではなく最高会議(議会)選に関する規定であり、その「拡大解釈」は国内でも議論を呼んだ。
「ウクライナ憲法裁と政治が評価を下すべきだ」。ロシアのプーチン大統領は17日、留任に関する自国メディアの質問に回答。仮に停戦交渉が再開されて2国間で何らかの合意を得ようとする場合、ゼレンスキー氏の正統性が「重要な問題になる」と述べた。西側諸国やウクライナの一部に停戦論があるのを知った上で、同氏の権威失墜を狙ったもようだ。
ロシアのスパイ機関である対外情報局(SVR)は20日、具体的な根拠は示さないまま、ゼレンスキー政権への軍や国民の支持率は20%以下と発表。「西側諸国は急落を非常に懸念している」と宣伝した。
ゼレンスキー氏は2019年に就任後、支持率の低迷も経験したが、ロシアの侵攻を受けて「戦時大統領」として国民を団結させた。ただ、昨年の反転攻勢で成果を出せずに軍の犠牲が膨らみ、ザルジニー総司令官(当時)と摩擦が表面化。こうした逆風が、大統領選の延期を決断させたとも言われている。
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は18日、5年超となるゼレンスキー政権でイェルマーク大統領府長官が人事権を掌握し、対外交渉も独占していると報道。直接選挙を経ない高官が権力を振るうことに疑問の声もあると紹介した。