ガザ食料危機、一段と悪化=弱者に支援届かず 2025年08月17日 05時40分

パレスチナ自治区ガザの中心都市ガザ市で7月、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の診療所を受診した生後7カ月の乳児(UNRWA提供・時事)
パレスチナ自治区ガザの中心都市ガザ市で7月、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の診療所を受診した生後7カ月の乳児(UNRWA提供・時事)

 【カイロ時事】イスラエルのイスラム組織ハマスに対する掃討作戦が続くパレスチナ自治区ガザで食料危機が一段と悪化している。飢餓の拡大を憂慮する国際社会はイスラエルに支援拡大に向けた措置を取るよう求めるが、状況が改善されるかは不透明だ。
 ◇汚水で空腹紛らわす
 「われわれ全員に死んでほしいのだろう」。中部デイルバラで避難生活を送るユセフ・ムハンマドさん(35)は、時事通信の電話取材に対し、声を絞り出すように語った。2日間で食事は一度、レンズ豆のスープだけ。蚊の幼虫ボウフラが湧く汚水で空腹を紛らわす。腎臓の持病が悪化して高熱が続くが、医薬品もない。
 イスラエルと米国が主導する「ガザ人道財団(GHF)」は、ガザの数カ所で支援物資を配給しているが、常に住民が殺到。食料を得るには住民同士の争奪戦を制する必要もある。厳重に警備された配給所周辺で混乱が広がる中、人々が銃撃により死傷するケースが相次ぐ。体力が落ちたムハンマドさんは「行くのをやめた」。
 一方、国連などの配給所は機能していない。警備が手薄で略奪が常態化しているためだ。略奪者の「利益」が上乗せされた盗品は市場に流れるが、貧しく弱い人々には「あまりに高額すぎる」(ムハンマドさん)という。
 ◇略奪覚悟で物資搬入を
 食料不足は確実に深刻化している。ガザ保健当局によれば、2023年10月の軍事作戦開始後に栄養失調で死亡した251人のうち、186人が今年7月以降に集中している。各国によるガザ上空からの物資投下が始まったが、危機は全く解消されていない。
 日本や英国など26カ国と欧州連合(EU)の外相は今月12日、「想像を絶する」ガザの人道状況に対処するため、国連や国際NGOによる支援拡大を可能にする措置をイスラエルに求めた。
 イスラエルはハマスが体制維持のために物資を横取りしていると一方的に主張し、食料供給を制限してきた。その結果、食料不足が進み、ハマスと無関係の略奪も横行しているとみられる。
 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長は「世界のどの紛争地でも、物が不足すれば略奪は起きる」と指摘する。現状ではむしろ、盗まれるリスクがあっても物資を供給し続け、略奪の誘因を低減させることが重要だと強調。「今、大量の食料をガザに入れなければ、皆どんどん弱っていく」と強い危機感を示した。 

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オンライン取材に応じる国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長=14日
オンライン取材に応じる国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長=14日

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