英仏核協力、「ロシアに影響」=欧州の米依存は不変―専門家 2025年07月17日 14時42分

【パリ時事】欧州の核保有国、英国とフランスは10日の首脳会談で、核抑止力での協力強化を決めた。「ウクライナに侵攻したロシアは、いずれ欧州に攻めてくる」という危機感が背景だ。トランプ米政権が欧州防衛に消極的な姿勢を示し、不安をかき立てた面もある。英有力シンクタンク王立防衛安全保障研究所(RUSI)の「拡散・核政策」問題責任者ルカシュ・クレサ氏は時事通信の取材に、欧州が安保面で米国に依存した状況は不変だが、英仏合意は「ロシアに影響を与えうる」と指摘した。
―英仏は合同組織「核運営グループ」を設置する。具体的な活動は?
新組織は英仏の核戦力を巡る作戦立案や演習実施に向け、突っ込んだ意見交換と調整を行う可能性がある。危機・紛争に直面した際に敵対国の攻撃を思いとどまらせる協調行動への備え、攻撃対象の選定といったテーマを俎上(そじょう)に載せることも考えられる。
―対ロシア効果は。
英仏の発表は潜在敵対国へのシグナルだ。ロシアは米国を主要な戦略上の競争相手とみなし、英仏を軽視してきた。しかし、両国は核抑止力を最大化する選択肢を持つことで、ロシアの意思決定に影響を与えることができる。ロシアが英仏いずれかの死活的利益を脅かそうとすれば、両国からの反撃を考慮しなければならないからだ。英仏は米国の関与がなくても行動するかもしれない。
―北欧・東欧の懸念を払拭できるか?
北大西洋条約機構(NATO)は、欧州に前方展開したB61核爆弾をはじめとする米国の多様で大規模な核戦力が要だ。北欧・東欧の大半の国にとって、米国が安保の支柱であることは今後も変わらない。ただ、英仏首脳は欧州が「極度の脅威」に直面した場合、両国による反応が不可避だと宣言した。重要で、歓迎すべきニュースだ。もっとも、具体的な対応はケース・バイ・ケースで、核による反撃ばかりではないだろう。
―東欧ポーランドでは、核兵器の国内配備などへの期待論がある。
ポーランドはNATOの核任務で果たす役割を拡大させつつ、英仏と抑止力の協議を進めることに関心がありそうだ。ただ、現時点で仏核兵器をポーランドに配備する話はなく、英国は核兵器を他国に展開する能力を有していない。