積極外交展開、公約履行に課題=インドネシア次期大統領、来月就任 2024年09月21日 14時34分
【ジャカルタ時事】インドネシアのプラボウォ次期大統領の就任まで1カ月を切った。10月20日の就任式直前に73歳となり、同国史上最高齢で政権の座に就く。任期は5年。就任前から積極外交を展開する一方で、大統領選で打ち出した数々の公約を守れるのか、早くも疑問視する声が上がっている。
プラボウォ氏は陸軍特殊部隊や戦略予備軍の司令官などを歴任した元軍人。1970年代には東ティモール独立運動の武力弾圧を指揮、90年代後半にも人権活動家の拉致や監禁に関与した疑いが付きまとう。一方で、幼少期を欧州で過ごしたことから英語だけでなく、フランス語なども流ちょうに話すとされ、「ユーモアのセンスもある」(日本政府筋)との人物評も聞かれる。
今年2月の大統領選で60%近い票を獲得し、3月下旬に当選が発表されると、中国と日本、マレーシアを相次ぎ訪問。7月はフランス、トルコ、ロシアなど、今月初旬にはラオスやカンボジアなど東南アジア諸国を訪れ各国首脳と会談。大統領としての足場を築いた。
しかし、選挙時に掲げた公約の前には高いハードルが並ぶ。国内総生産(GDP)成長率を任期中の2029年までに7~8%まで引き上げるとしているが、ここ3年は5%台。国際通貨基金(IMF)も成長率は29年まで5.1%にとどまるとの見通しを示している。
多くの票を獲得する一因となったとみられる「学校無料給食プログラム」にも、予算の壁が立ちはだかる。当初は400兆~450兆ルピア(約3兆8000億~4兆3000億円)を割り当てるとしていたが、25年予算案ではその2割以下の71兆ルピアにとどまった。
アジア経済研究所の川村晃一研究員は「ロシアなどにも目配せしながら、これまで通り中立外交を実践していると思う」と指摘。その上で「当面はジョコ大統領の路線を継承していくとみられるが、掲げた成長率目標には無理がある。無料給食も様子を見ながら、徐々に実施していくのでは」と話している。